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アイマイモコ
10

「俺は、前の陸の方が好きだな。にっこり笑って、無邪気に俺に引っ付いてくる陸が…。」

「虫酸の走る言い方すんな!」

「やだなあ〜本音だよ。好みの子にそんなことされたら、普通そうでしょう? それとも陸って、好きなヤツとか全然いなかったわけえ?」

「…っ、」



大切なものはあった。

だけど、自分の目の前で音をたてて崩れていった。
心が折れそうになった。
だから必死で盾を作って、自分の小さな小さな箱に閉じ込めた。

だから俺は必死で笑った。

ちゃんと笑っているのかな――?

毎日、朝起きると一番最初に見るのは自分の顔。自分はちゃんと笑えているのだろうかと見ていた。
中学の頃、それを見破った奴は誰一人としていなかった。


「くっだらねえ。 愛するっていう得体の知らない感情なんか、どうせ裏切られるだけだしあっても仕方ないだろ」

「卑屈な言い方するね?」

「他人の事で煩わされるのはもうウンザリなんだよっ!」

「へぇ…」

そう言って、唇を人差し指で撫でながら薄笑を浮かべる秋。
周りでは、クラスメート達が固唾を飲んで二人の出方を見守った。

すると秋がつまらなそうに鼻を鳴らし腰を上げて言った。



「はあーあ。やーっぱり陸って、臆病なんだねえ?」

「……は?」

「みんなが離れちゃって、誰も陸に構ってくれなくて、どこへ行っても一人ぼっちな陸」

「――っ!!」

「陸は永遠に一人ぼっち…。そんな陸は孤独になるのが怖くて、良い人の皮を被ってたんだ?」

「…っ、違うっ!」

秋の一言にドクンドクン、と動悸が速くなるのを感じた。
焦るな、動じるな。
こんな事どうってことない。
そんな心情の俺とは裏腹に、秋は冷酷に笑いながら近付いてきた。

「あれえ?どうしたの?陸。顔色が優れないけど」

「っ、黙れ!」

「それとも、本当のことを言われたから動揺してるのかなあ?」

「違うっつってんだろ!」


今まで守ってきた盾は崩さない。
それが俺のプライド。
だからお願いだ、みっともないからこんな事で揺らぐな。

死んでも守るんだっ。

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