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ブラザーに愛をこめて
17

「あ、翔太。おはよう…」

学校に着くと腹痛で昨日欠席していた龍が学校に来ていた。
しかしそこにはいつもの元気はなく、変わりに盛大な溜息を付いた龍がいた。
まだ腹が痛いみたいだ。

俺は少しでも龍の負担を減らすため、今日は俺が龍のクラスに行った。


「龍、お前大丈夫か?」

「…え? あ、あぁ!平気平気!ところで千里さん、今日翔太の家に来たんだろう?」

「うぅぅー、そうなんだよ!」

「あーあ。その顔だと、また千里さんに意地悪されたんだろう?」

俺は全身に力を込めて首を何度も縦に振り「うん」と頷いた。すると龍は「やっぱりな」と苦笑いをした。
龍も長い付き合いだから千里さんの存在と本当は腹黒い事も知っている。

「今日なんか、シャーペンで俺を刺そうとしたんだぞぉ!」

「翔太‥…こないだは本の束を投げつけられたんじゃなかったっけ‥?」

「…‥」

そうだよ!千里さんは兄貴がいなくなった瞬間、部屋にあった本を片っ端から俺に投げて来たんだ。しかも兄貴が戻って来ると本を散らかしたのも俺のせいにして、全部片付けさせられたんだ。

「がああああっ!俺が何をしたんだよぉぉ!?」

「お、落ち着け翔太! ここは教室だぞ!」

俺は机に片足を置いて雄叫びをあげた。
すると龍は周りを気にしながら俺の肩を押さえると必死で「ここは俺のクラスだ、早まるな!」と止められた。


「‥おい園田。騒ぐのは良いけど、あんたの声が廊下まで聞こえてるぞ?」

「「…‥は?」」

次の瞬間、その声に俺と龍の動きがピタリと止まった。

「て言うか、いっつも隣のクラスからあんたの声が聞こえてるけどな!」

その男はそう言って教室に入ってくると横に鞄を引っ掛け、俺を見ながら、からかうような不敵な笑みをしてきた。

‥ん、あれぇ?こいつって…?

「…あぁ!お前‥昨日の!」

「やっと気付いたか。‥どーも。その様子だと昨日柳田からメール来てたみたいだな?」

その男は昨日のお昼休みに、龍が欠席だと教えてくれた男子生徒だった。
やべぇ!俺、興奮のあまり、思わず指を差しちゃった。

「おう!やっぱりお前の言うとおり、メール来てたよ。ありがと!」

「…あっそ。 それからさ、俺には“お前”じゃなくて“倉橋”って名前があるんだけど?」

「…え?‥は、はぁ」

コイツって、クールな上に変な奴だなぁー‥?

それに、せっかくの色男なのにニコリともしないなんて…。あ、一応、不敵には笑うみたいだけど。
でも格好良いからそのクールな口調さえも様になっていた。

「く、倉橋クン…すか」

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