ブラザーに愛をこめて
16
「あ」
「……」
…や、やべぇ〜!
俺は今、一番言ってはいけない人に言ってしまった!
「おはよう。翔太君」
「…あは、あはは。お、おはようござ…───っ!」
その人はに〜っこり!と笑ったので俺も苦笑いしながら取り敢えずホッと胸を撫でおろしたのも束の間──俺の顔の真横にはシャーペンが刺さっていた。
「ぎゃあああ!」
「ちっ!惜しい。あと数センチだったのに…」
犯人は舌打ちをした目の前にいる男だった。
「ぜぇぜぇ‥はぁはぁ‥…こ、殺す気ですか!?千里さん!」
「‥あぁ」
「………っ!」
相馬千里(ソウマ チサト)さん。
この人は、兄貴のもう1人の友達だ。
今、鋭い目つきで俺を威嚇している男はとても美形で、それはそれは女の子のように綺麗な顔立ちをしている。背も俺よりも低くて、165pしかない。
そんな凶暴な男はいつも俺に敵意剥き出しだ。
しかし──
「…騒がしいなー翔太、客か?‥って、千里!?」
「れ、怜治ぃぃぃっ!」
ああ‥ダメだ! め、目眩が!
──問題はここからだ!
その千里さんは、兄貴を見るなり、鬼の形相からキラキラと目を潤ませて可愛らしい男の子へと変身したのだ。
「あは!会いたかった!」
「……」
もう分かると思うが、この人完っ璧に猫を被っています!
どうしてだか、俺が中学の時に初めて会った当時から、俺だけには腹黒バージョンを出してきたのだ。
「…‥はーあ、疲れる」
「あっれぇー!?翔太君、まだいたんだぁー?」
「はははぁー、いました!これから学校なんです!」
「あっそぉ!大変だねぇー高校生は毎日毎日。その点、大学生は休講があったりするから楽で良いよぉ?」
「…は‥はぁ」
あのー、兄貴に分からないように遠回しに爽やかな顔して、イヤミ言うのは止めて欲しいんですけど‥
兄貴も兄貴で、長い付き合いなら何故気付かないんだろう?
はあ…なんか、わずか5分の事なのにすごく疲れたよ。
あぁ!きっと、兄貴と千里さんが2人揃っているからかも。
「…‥‥行ってくる」
「あ!行ってらっしゃーい」
そう言って見送ってくれた千里さんは、口調こそ優しいものの俺を見る眼差しは再び鬼の形相と化していた。
「………っ!!!」
……超怖すぎるっ!
「お前さぁ、家に来るの早すぎるんだよ!翔太に気付かれたらどうするんだよ!?」
「…ごめんね?でも大丈夫だよ!あの翔太君が気付くわけないじゃーん!」
「おい!あんまり翔太にちょっかい出すんじゃねぇぞ!」
「ごめん怜治ぃー!もう翔太君からかったりしないから、許して!」
そう言って怜治と千里は、部屋へと入っていったのだ。
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