ブラザーに愛をこめて
12
歩いて帰ろうとした俺は、兄貴に襟を掴まれて車の助手席に無理やり引っ張り入れられた。
「いってえーなっ!俺は猫じゃねぇんだからなっ!」
「ふんっ、懐かない猫はこっちの方から願い下げだ!」
「〜〜っ、」
いっちいちムカつくっ!
だけど、俺のムカつきなんか関係ないと言わんばかりに、兄貴がまた俺の襟を引っ張った。
「おい」
「は?なんだよ!…があぁあっ、だから襟を引っ張るなっ!」
「前向け」
「は?」
そう言って兄貴は、俺の両肩を掴んで兄貴に背中を向けた。すると首から髪にかけてゆっくりと触れてきた。
首もとがムズムズする。
「ちょっ、ちょ、ちょっと兄貴…ちょ、くすぐってぇ」
「黙ってろ」
俺の後ろの髪を擽るように上に掻き上げると、今度冷たいものが俺の首に触れた。その冷たさにビクと身を捩った。
「ひゃっ」
「うーごーくーな!」
「冷たいんだよ!」
「我慢しろ!…あぁほら、もう終わったぞ!」
「え…?」
車のサイドミラーを見ると、俺の首にシルバーのネックレスが付いていた。そしてチェーンには年季の入ったシルバーの指輪も付いていた。
「あ、あのー…これは何?」
「――はあ!?何お前、まさか本気で忘れてんのかよ」
「…え?」
「‥…はぁー。この鈍感が。翔太お前、今日で17歳だろう」
…――あっ!
そうだ、忘れてたよ。
そうなのだ。俺は実は、まだ17歳になっていなかったのだ。それが今日晴れてその年を迎えた。
そして、兄貴も9月生まれだから正確にはまだ20歳なのだ。
そっかそっかー本気で忘れてた。
毎年、母さんがケーキを作って待っているから辛うじて覚えているけど、今年はその母さんもいないから忘れてた。
けど兄貴は覚えてたんだ。
「はあー。しょーがねえヤツ」
「…‥」
兄貴は少し溜息をついたが、いつものようにイヤミな顔ではなく、心の底からの笑顔で俺を見ながら言っていた。
兄貴はやっぱりキレイで繊細な顔立ちをしているからそれだけでもとても様になっていた。
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