ブラザーに愛をこめて
09
「…あ‥あほって…兄貴‥なんですか?」
「あほな奴!」
「…‥あぁ」
…なるほどっ!要するに兄貴の好きな人はアホな女の子と言うわけですね?
俺が唖然としてると兄貴は顔を上げて続けた。
「…それに、鈍感だし泣き虫だし人の言うことは聞かねぇし生意気だし──」
「…‥」
うわぁ‥それは確かにメチャメチャな人だなぁ…
けど兄貴も、仮にも好きな人なのに言うことは容赦ないよなぁ‥ははは。
「けど…」
「ん?」
「…‥けど‥気が付くと考えてるのはいつもソイツの事ばっかりなんだ。目に入るとずっと見ていたくなるんだ」
「…‥は、はぁ」
兄貴はまるで恥じらう乙女のように顔を赤らめた。そして普段は絶対見せない兄貴のそんな顔に、少しだけ引き気味な俺だった。
「いつか告白もするつもりだ。あいつが俺のものになったら、たくさん愛してやりたいんだ!俺はあいつが好きだ‥」
「っっ!」
兄貴が言うと『アイツのものは俺のもの』という風に聞こえてしまうのは俺だけの秘密だ。
しかし、俺の思考に反してそう言った兄貴は真剣な眼差しでなぜか俺を見つめてきた。
「…好きなんだ!」
「…‥あぁ、い、いやぁ…兄貴、それは俺に言っても仕方ないだろ?ほら!俺さ、兄貴の気持ちはよーく分かったからさ!」
「…‥」
俺は、はいはいと兄貴の肩を叩いてそう言った。
兄貴は恥じらっているのか黙り込んでいたけど…
でも、おっどろいたぁ!
兄貴がまさかそこまでその人が好きだとは思わなかったよ!
あんな真剣に好きな人の事を、俺にまで語ると言うことは相当その人にお熱をあげていると言うことだよな?
「 ……あ。 もう1つ、あいつのムカつく所があった」
すると、黙っていたままの兄貴が思い出したように口を開いたのだ。
「…‥は?もう1つって…?」
「時々、ソイツの鈍感さにすっげぇムカつく時があるっ!」
「…っ! あ、兄貴…?」
え?‥ど、どうしたんだ!?
さっきまでの優しそうな顔から一変、目が据わっていて一気に機嫌も悪くなった。
しかも、俺に向かってそんな事を言われましても…
そして、心なしか視線がものすごく痛いです。
「……ムカつく!」
「…え?…っぐ!いてぇ!」
兄貴は機嫌が悪すぎて、俺の頭をグーで殴ってきた。
心外だ!俺は関係ないじゃん!これじゃあ、ただの八つ当たりじゃねぇかよ!
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