ブラザーに愛をこめて
06
やっとの事で兄貴の運転する車に乗れたのだが、今その兄貴が鼻歌を歌い始めたのだ。
さっきまであんなに俺の頭をグリグリやってくるくらい機嫌が悪かったクセに…!
ったく、兄貴も大概子供だよな?ドSなーんて言ったぐらいであんなに怒るなよな。
「へぇー…なぁ?兄貴って意外と運転上手いんだな?」
「はぁ?当たり前だ。俺を誰だと思ってるんだよ」
あー…言うんじゃなかった。
もろアホ丸出しじゃん!
だから兄貴って、いつも筆記ばかり落ちるんだよな…。
「あーあ、俺も早く18歳になって運転したいなぁー…」
「お前は必要ねぇだろ?」
「はぁ!?何言ってるんだよ! 俺だっていつかは家を出るんだから、兄貴のにずっと乗ってるわけにいかないだろ!」
「…‥」
俺がそう言うと、呆れ気味に兄貴は俺をちら見していた。
本当はさっき怜治が怒ったのだって、決してドSだと言われた事が原因ではない。自分の気持ちをストレートに伝えただけなのに翔太はちっとも気付いてくれなかったからなのだ。
「お前、家を出るつもりなのか?」
「…は? っていうか今じゃないよ。俺だってそのうちに出るだろう、って話しだよ」
「……へーぇ」
つまらなそうに兄貴はそう言うと、一瞬だけ俺に視線を向けてからすぐに運転に集中をした。
そこで俺はまた違和感を感じた。
「……あ、あれ? なぁ兄貴?家通り過ぎてないか!?」
「あ?良いんだよ、こっちで。ちょっと寄るところがある」
「…‥は?」
結局、学校に用事があるわけではない兄貴は俺を迎えに来てどこかに行くみたいだ。
――そして着いたのは、古着屋さんだったのだ。
「…‥」
「ここだ。入るぞ」
「うわぁ!ちょ…兄貴!」
俺は初めて行く古着屋さんに唖然と立ち尽くしていると兄貴が俺の手を引いて、中へと入っていった。
そして中へ入ると、兄貴は20代後半くらいの店長らしき人と話していた。
‥兄貴はここの馴染み客なのかもしれない。
すると店長が兄貴に紙袋みたいなのを渡していた。
それを黙って見つめてると店長さんと目が合った。
「……!」
「怜治くん、あの子は…?」
「…‥あぁ。弟です」
俺も続けて挨拶をすると店長さんが俺をしばらく見てから「あぁ、この子が怜治君の…」と言って笑っていた。
俺は何の事か分からず兄貴を怪訝そうに見たが、兄貴は俺から視線を逸らしちゃって聞けなかった。
古着屋さんを出ようとすると店長さんが
「頑張ってね」
と言った。
「…‥?」
ん?何のことやら…‥?
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!