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ブラザーに愛をこめて
05

「………」

「………」

なんか知らんが、兄貴の顔がいつも以上にムスッとしていた。
乗せてもらってる以上、あまり下手な事は言えずに肩身を狭くし黙っていると、兄貴が再び口を開いた。

「なんで後ろに行くんだ」

「……へ? あぁ、だって後ろの方が横になれるかなぁと思って。それに、外の景色とかも良く見えそうだし」

「だったら助手席だって眠れるだろ? それとも、お前は助手席だと都合悪いのかよ」

「‥あぁ??…い、いや、別にそう言う訳じゃねぇけど…。な、なんとなくそう思っただけだよ」

「……」

へ、変なヤツ。兄貴何をそんなにムキになって怒ってるんだ?
まぁ…俺は別に、ただの気分で後ろと言っただけで、絶対に後ろじゃなきゃ嫌だ!というわけではなかったので、前の助手席に座ることにした。


「なぁ?なんで後ろに座ったらダメなんだよ?」

「……運転するから黙れ!」


 ――っ、うが!?
こ、こいつ殴っても良いですか?
何だこれー!? 何?この偉そうな可愛くない態度はぁっ!

「んだよっ、クソ兄貴!」

「黙れ、泣・き・虫く〜ん」

「!!」

…な、な、な、泣き‥虫!?
そのキーワードが俺の体を硬直させた。そして、そのワードは昨夜の俺の大泣き姿を思い出し、顔を真っ赤に染めた。
しかし兄貴は、そんな俺を横目に、楽しそうに喉を鳴らした。

「昨日の翔太クンは、子供みたいに泣いちゃったもんなぁ〜」

そう言って、兄貴は羞恥に黙って俯いてしまった俺の肩に手を回してきたのだ。

「けど、」

「――っ!」

腕を回してきたかと思えば、今度はもう片方の手で俺の顎を掴み無理やり俺を上に向けさせ、急に兄貴が「けど」と言って真剣な顔になった。


「けど俺は‥そういうお前も好きだぜ…!」

「………」

兄貴はそう言って、俺から離れると車の鍵を慌てて回して運転をし始めた。兄貴が恥ずかしそうに俺をちらっと見ていたのを俺は知らない。
んー?兄貴が俺の…そういう所も好きだって言うのは‥まさか、

「兄貴って、ドS!?」

「――っ!」

「っ、うわぁ!あっぶねぇな兄貴!こ、殺す気かよ!今の運転おかしかったぞ!」

「……」

危ない危ない!もう少しで死ぬところだった。
俺が兄貴にドSか?なんて聞いたのがいけなかったのか兄貴の手元が狂ったようだ。

「……お前、ドSってなんだよ」

「だって!俺の泣き顔が好きって、イコールいじめるのが大好きって事だろう?兄貴は!」

「…っ‥はぁー、全っ然分かってねぇし‥」

「………へ?」

その時兄貴には、俺の頭の上にとてもマヌケなお花があるように見えたそうだ。

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