ブラザーに愛をこめて
04
兄貴は免許を持っている。
18歳の時に取りに行ったらしいのだが、実技はすぐ合格したのに筆記は30回試験を受けなおしたという記録がある。
当時は覚える気があるのか、と家族全員で呆れたものだ。
そして免許を取った翌年、父に誕生日プレゼントとしてもらったのがこの車だった。
けっ、超ズりぃんだよ。
「兄貴遅いんだよっ!」
「お前、俺がずっと見てたのに気付かなかったのか?」
「…はぁ!?ずっとって…」
「あぁそうだなぁ…。お前が来る5分くらい前だから…‥まぁザッと20分くらいだな?」
「だああああ――っ!し、信じられねえし!そんなに前からいたなら声かけろよなっ!」
「……そんな事より翔太、お前は早く車に乗れ!」
「っ、そ、そんな事よりもって…。て、てめぇっ…」
またしてもマイペースにそう言って未だ窓から顔を出したままの兄貴は、車の中を指差し、俺に乗れ、と促した。
本当にコイツには弱点とかないのかよ…弱点はっ!
しかしそう思った所で、俺の中で別の疑問が浮上した。
「あ、あれ?つーか兄貴、学校に用事があるから来たんじゃ…」
「はぁ? バーカ。今日はお前を迎えに来たんだよ」
「っ、」
ムスッとした兄貴は俺の額に向けてデコピンをした。そして俺は地味な痛さに両手で額を押さえて兄貴を睨んだ。
「…くぅぅぁ‥痛ってぇなぁ!なにするんだよ!兄貴ぃ!」
「バーカ。早く乗れっつーの」
迎えに来たとか意味わかんねぇ!
だいたいっ!そんなの事、俺別に頼んでないし…‥。 ――まぁ、迎えに来たと言うのなら、乗ってやらんことはないがな?ははははぁっ!
「いやぁご苦労さま!じゃあ、遠慮なく乗らせてもらうよ?」
「…アホが…‥っ、」
若干社長気分で体をふんぞり返えらせた俺は、そのまま車の後ろの扉を開けた。
しかし、それを見た兄貴は瞬時に慌てた様子で車から出てきた。
「はぁー。翔太、お前はなにを考えてるんだ。誰が後ろに乗れと言った!俺は助手席に乗れって言ったんだよ!」
「…は?あ、あぁ‥って言うか、別にどっちでも良いじゃん!」
俺がそう言うと兄貴は急に不機嫌になり、片眉をつり上げた。
へ?何だこの張り詰めた空気は…
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