ブラザーに愛をこめて
03
メールは兄貴からだった。
「……‥」
メールには「放課後、高校の正門で待ってろ」と一言添えてあっただけだった。
兄貴は、今日自分の講義が休講だと言っていたにも拘わらず、わざわざ学校に来るみたいだ。
なんじゃそりゃ?
学校に用事でもあるのかな?それに、兄貴からわざわざ学校に来るなんて珍しい事もあるもんだ。
俺は取り敢えず兄貴にメールの返信だけをしてみた。
・
・
――早いもので、あっという間に放課後になり、俺は正門で腕を組んで兄貴を待っていたけど、兄貴の姿がなかった。
「……兄貴の奴ぅ遅すぎっ!」
はーぁ…。それにしても、まだ初夏だというのに何でもうこんなに暑いんだろうか?
こんなに待つんだったら、もう少し教室にいれば良かったなぁ。そしたらまだクーラーにあたっていられたのになぁ〜。
そして今、ここにアイスでもあればもっと良いのになぁ〜!
アイスはもちろんバニラ!あぁいや、チョコミントかな? あぁ‥もうどれでもいいや!
目の前にアイスがあるかのように俺はうっとりしてしまい、周りの目も忘れて持っていた鞄をギュウ〜と抱き締めていた。
〜〜♪♪
「っ!」
すると携帯が鳴った。
いや、メールが来たみたいだ。
メールは兄貴からだ。
『バーカ!何、鞄なんか抱き締めてんだよ』
「…‥げっ、」
はぁ!?な、なんだこのメールはよぉ!って言うか、今の兄貴に見られたのか!?
ど、どこにいるんだ!?
俺は兄貴を探し始めると、また兄貴からメールが来たのだ。
『早く探してよ!翔ちゃ〜ん?』
「…っ、」
ゆ、許せんっ!こいつ絶対に遊んでやがるな!クソォもうあったまに来たっ!こうなったら兄貴に電話をかけちゃる。
そして、携帯を開いて迷わず兄貴に電話かけた。
『もしも─』
「バァァァカッ!クソ兄貴、さっさと来やがれぇ!」
『‥っ、ガキかお前は‥』
「っ、むぎぃぃぃぃーー!!!」
兄貴の方が一歩上手でした。
打倒兄貴!コイツには何が何でも絶対に頭を下げさせてやるっ!
俺はまたしても人の目を忘れ、公衆の面前で雄叫びをあげて1人で意気込んでいた。そしてその中、後ろで何回目かの車のクラクションにようやく気付いた俺は何気なくそっちを振り返った。
「翔太、みーっけた!」
「………」
そこにいたのは、車の窓からご機嫌そうなアホ面な兄貴が、わっざとらしく携帯を片手に手を振っていた姿だった。
こ、こいつ、許さん!
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