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ブラザーに愛をこめて
19

「それより翔太、俺はお前の口から、まだ謝罪の言葉を聞いてないんだけど?」

「…‥っ」

「これだけ長谷川と俺にも迷惑かけたんだからな?」

そう言った兄貴は、溜息を付きながら、やれやれと言った感じで俺に迫ってきた。
そんな俺たちを見た長谷川が間に割って入ってきた。

「‥そ、園田?もうそのくらいで勘弁してあげたら?翔太クンだって、ワザと遅くなったわけじゃないと思うぜ?」

「……はぁ?冗談言うなよ。コイツは、俺への腹いせにワザと遅く帰ってきたんだよ!今日だってどうせ、遊んできたに決まってるんだよ!」

「……」

(──は?)

俺は眉を寄せた。
だって兄貴が「フラフラしやがって」と、頭ごなしに俺が夜遊びをした。と言ってきたからだ。
フラフラ、だと?夜遊び、だと?
それは兄貴だろ!?

……何も知らないくせに!
俺と奈緒の間に、何があったかも何も知らないくせに!
俺があの公園で、どんなに悩んでたかも知らないくせに!

「──…だろ」

「なんだよ、翔……」

俺は俯いてた顔を静かにあげると、兄貴に視線を逸らさずにおもいっきり睨み付けた。

「…フ、フラフラしてん‥のは、どっちだよ!?」

「…はぁ?」

「フラフラと夜遊びしてんのはどっちだよ!?…それはお前だろ!?昔から、女の子連れてきては、引っ替えとっ替えしてただろ」

「っ!!」

「っ、翔太クン!」

頭に血が上った俺には、もう止める事が出来なかった。
ただ、俺は‥兄貴に自分の気持ちを全部踏みにじられた事が、すごく悲しかったんだ…

「自分は楽しく女の子といちゃいちゃ遊んでたクセに、兄貴は俺と奈緒の邪魔をした!」

そうなんだ!あの時、兄貴が余計な事を吹き込まなければ、奈緒はあの先輩の所に行かなくて、今でも俺の側にい………っ、

「…」

最低、俺。また考えちゃった。
もう奈緒の事は蹴りが付いたって、自分で言ったくせに…


「…翔太?」

「……うるせっ!触るな!兄貴には俺の気持ちなんて分からないんだ!お前は俺から大事な物を全部奪った!友達も、好きな人も!」

「翔太!落ち着け……」

「離せよ!触るなって言ってんだろう!?俺は兄貴なんて嫌いだよ!俺はてめぇが世界中で一番大っ嫌いなん……」

──パシンっ

「園田!」

頬に衝撃が走った。
俺は一体何があったのか分からずに、唖然と立ち尽くしていたが、自分の頬がズキズキする事から俺は頬を叩かれた。それも兄貴に…

「………っ、」

「…園田、お前……」

兄貴は俺を見た。
睨んでいる俺を余所に、兄貴の方は悲しそうにそれでいて、切なそうな目で俺を見ていた。

「……翔太こそ‥お前こそ、人の気持ちなんて全然分かってねぇじゃん!言っとくけどなぁ、俺には好きな奴がいるんだ!」

「……は?」

「ソイツは鈍くて、俺の気持ちなんてまったく気づいてない!だけど俺が好きなのはソイツだけだ!他の女なんて目に入らない!好きなんだ!」

本当に勝手な兄貴だ!
だったらその兄貴に集まってくる女の子達の存在って、いったい何なんだよ!

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