ブラザーに愛をこめて
17
後ろが振り向けない。
手には靴を持っていたが、俺の手のひらは恐怖で冷や汗でいっぱいだった。
「翔太、聞こえないのか?」
「……っ」
「翔太!今何時だと思ってる?」
兄貴の怒り方がいつもよりも強い口調になっていた。
「おーい翔太?今何時か、って聞いてんだけど?」
「‥っ、…じゅ、11時‥」
「11時15分だよっ!おいこら!どうつもりだよ、お前!」
ぎゃあぁ!超こえええー!
ヤ、ヤンキー入ってるし…。
「翔太!いい加減にしろよ!お前はガキん時から、都合が悪いとすぐだんまりするんだよな!?」
「……っ」
だんまりもしたくなるよ!
だ、だって、兄貴の俺を見る目がすげぇ怖すぎるだもん!
「おいおい園田。気持ちは分かるけど、あんまり翔太クンを怒るなよ、な?」
「‥え?」
俺が引き気味になっていると、兄貴の背後から冷静に兄貴を宥めながら、救世主のごとく、長谷川さんが出てきた。
俺が黙ってそれを見てると長谷川さんも、俺の視線に気付いてから俺の頭とコツと叩いた。
「よ!翔太クン?随分遅かったねぇー?心配したんだよ」
…ん?‥心配って‥?
「…‥え?長谷川さん、俺の為にわざわざ来てくれたの?」
「うん、そういうこと!あと10分で帰ってこなきゃ、警察か探しに行くつもりだったんだよ」
(……げぇ!マジかよ!?)
そういう話しを聞いちゃうと、自分でやった事がどれだけ迷惑をかけたか思い知らされる。
「…‥あー‥は、長谷川さん!そ、そのぉ‥迷惑をかけて、ごめんなさいです!」
「…‥。うーん‥俺は良いけど、翔太クン?この場合はお兄ちゃんにも謝った方が良いよ?」
「…‥っ、」
「…」
うわぁ、怒ってる!
俺はそこで、初めて兄貴の顔をちゃんと目の当たりにした。
…だが、兄貴が何を考えてるんだか読み取れなかった。
ただ、俺の顔を目を細めてじっと凝視しているだけ。
俺はもう、顔が上げられない!
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