ブラザーに愛をこめて
16
やばーい!!!!
俺、居眠り小僧かもしれない!
あれからベンチに座ったまま、動けずにいた俺は、久しぶりの緊張と気疲れでそのまま寝てしまっていたみたいだ。そして目を覚ますと、既に人通りはなく公園の時計は11を差そうとしていた。
正確に言うと、夜10時50分。
けど辺りを見回すと鞄もその中身もあることから、どうやら盗まれたものは無さそうだ。
俺ってすっげぇー…
…って、こんな事やってる場合じゃないや、どうしよう。
こんな時間に帰ったことなんかないのにぃ。遅いと兄貴がうるさいからなっ!
増してや俺まだ制服だし…
「よーし!と、取り敢えずメールだけでも…」
そこで俺は、やっと携帯を開いた。しかし携帯の中身を見て、俺は思わず息を呑んだ。
「な、なんじゃこりゃ…‥」
着信履歴がすべて『兄貴』になっていた。
時々知らない携帯番号が交じっていたけど、それは2件くらいで、それ以外は全て兄貴の着信は50件だった。ものすごい有り得ない。
メ、メールも出来ないかも…
「い、家に帰るか!…よし!兄貴に見つからないように入れば…‥うん、大丈夫!」
しかし、こうやってる間も、兄貴への着信は震えたり止んだりの繰り返しだった。
って言うか、もう良いだろう?出ないんだから諦めろよ!
えぇい!電話、鳴り止めぇ!
・
・
・
「はぁー…」
ついに辿り着いてしまった兄貴の待つ園田家の前で、俺は悶々と頭を悩ませていた。
「…鍵は持ってるだろう?そしたら靴を持って上に行って、靴は夜中に戻しておこう。それで部屋に滑り込めば、OK!」
よし!作戦会議終わり!
では、家の鍵を開けます!
俺は極力、音が響かないように恐る恐るに鍵を回した。
──カチャリ
(よし!開いた)
そして次は扉を静かに開けた。
「……って、あれ?なんだよ!心配して損した。そ、そうだよなぁ?兄貴だって、流石にこの時間じゃあ寝てるよなぁ…‥はは、はははは!」
だけどドアを開けると玄関も真っ暗で人の気配はしなかった。
高まっていた緊張感が一気に解けた俺は、取り敢えず靴だけは自分の部屋に持っていこうと靴を手にした……が、
──パチン
「随分ご機嫌だなぁ、翔太?」
「‥へ?」
玄関の電気が付いた。
しかし、電気を付けるには、リビングまでいかないと付かない。だけどその俺は玄関にいるのでコレをつけられない…‥!
「…………」
靴を取ろうとして背中を向けてた俺は、聞こえてきた聞き覚えの有りすぎる声に、恐くて後ろを振り向けなかった。
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