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ブラザーに愛をこめて
15

「翔太くん!ホントにごめんね!あたし…」

「もういい…」

「でもっ…!」

「もういいって言ってんだろ!」

なんかバカみたいだ…‥
奈緒も兄貴も本当の事を知っていたのに、俺だけ何にも知らなくて。
奈緒が悩んでた時も俺は何もしてやれなかったし。


『あたし好きな人ができたの』


俺は振られた時に確かに奈緒にそう言われた。
けど俺はてっきり兄貴の事だとずっと思っていた。

 だけどそう考えた所で思考を止めた。だって、そんな事分かった所で3年前に戻れるわけじゃない…って冷静になってわかった。

「ごめん、奈緒」

「…ううん。私がはっきりしないのがいけなかったの」

 そう言った奈緒は少し自嘲気味に笑った。
そして、俺はずっと聞きたかったことあるんだ。

「…なぁ?正直に言ってくれないか? あの時、俺の事好きだった?」


「……好きじゃなかったら‥‥翔太くんが嫌いだったらこんなに悩まなかったよ。すごく勝手な話しだけど…」

「…ぷっ、ホントだよ。勝手な奴だよ!」


『─こんなに悩まなかったよ』

これで充分だよ、奈緒。


「…奈緒。これからも彼氏と仲良くしろよ!」

「…‥え」

これで良かったんだ。
武藤先輩と付き合った事は間違っていなかったんだと思う…
これで良い!


「うしっ!そろそろ帰ろっか」

「…う、うん」

ホントの事を聞けた俺は少し寂しい気持ちになったがこれでやっと納得ができた。
…それに俺達は確かにお互い好きだった、それだけは間違えないんだ。
ただ武藤先輩の方が俺よりも好きになってしまったと言うだけの話しなんだ。


「じゃあな奈緒!」

「…うん‥」

そして俺は本当の意味でも彼氏彼女からさようならができた。




「あぁぁー!夏だけど、やっぱり日が落ちると少し肌寒いや」

そう言って、1人になった俺は公園のベンチに座って腕の伸びをした。
そして外は龍が帰ってからおそらく2、3時間は過ぎていたので暗くなっていた。
もう8時くらいかもしれない。

だけどもう少しだけ、このままでいたかった。


そして、俺は横に置いた鞄の中で何十回も震えた携帯に気づかずにいた…

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あきゅろす。
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