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ブラザーに愛をこめて
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別れ際に奈緒が言った。

『お兄さんに伝えてくれるかな?“ごめんなさい”って…』

そう言って、辛そうな顔をした奈緒は俺に見せたくなかったのか、走って行ってしまった。
そして冷静になり始めた時にふと、奈緒が言った言葉を思い出し、引っ掛かりを感じたのだ。

まてよ?兄貴にごめんなさいって、どういう事だよ?なんでそこで兄貴の存在が出てくるのか理解できないよ。
……っ、まさか!兄貴の奴、奈緒に何か言ったのか??
女たらしのアイツなら絶対に何か言ったに決まってるんだ。
くそぉ!なんでアイツはいつも俺の邪魔をするんだ!

そんなに俺の幸せが妬ましいか?
そんなに自分だけが輝かないと、認めないのか?

俺はそんな気持ちを渦巻かせながら兄貴の部屋に入った。
しかし、兄貴は謝るどころか、俺の方に問題があったんじゃないかと言ってきた。

『……』

『翔ー太。あーんな地味な女の事なんか忘れちゃえよ?俺の顔見て赤くなるような尻軽だぞ?』

…っ、お前が言うなっ!
きっと兄貴が何か言ったに違わないんだ!何も言わなければ、きっと奈緒も頬を染めるなんて行為はしなかったと思う。
しかも、兄貴は奈緒に対して酷い奴だと罵った。奈緒の事をバカにしたんだ!
奈緒は尻軽女なんかじゃないし、地味な女でもないんだ!

──俺の‥俺の大好きな人だ。

だけど別れを告げられてしまった今となっては後の祭り。

それからしばらくすると風の噂で、奈緒とあんなに奈緒をバカにしていた兄貴が付き合い始めたと聞かされた。
そして数ヶ月後には別れたとの噂もあった。




──こうして俺の初恋は、納得も出来ないまま呆気なく終わったのだった。

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