ブラザーに愛をこめて
10
彼女、支倉奈緒(ハセクラ ナオ)と出会ったのは、俺が中学1年で奈緒が中学3年の時だった。
当時入った放送部で、奈緒とは初めて話した。新入部員だった俺と先輩だった奈緒は、お互い、話しをしてるうちに意気投合するようになって距離が縮めていった。
その時の兄貴も、帰宅時間に今ほど煩くなかったのでわりと気楽だった。
中学2年の時、俺から告白をして付き合い始めた頃には既に奈緒は中等部を卒業し、高等部へ行ってしまったけどそれでも毎日、少しの距離でも一緒に帰ったりするのが楽しかった。
それから付き合ってしばらくしてから、奈緒を家に連れてきた時にちょうど兄貴とも対面した。仲は悪かったけど、一応家族だし。と、俺は奈緒を兄貴に紹介をした。
しかし、その時の兄貴は俺の隣の彼女を見るなり苦虫を噛み潰したような顔をしたのだ。
『どーも』
しかも、そのぶっきらぼうな言葉を1つ残して…
最初はそんな兄貴の態度に苛立ちさえ感じていたのに、その数日後に放った奈緒の一言で、そんな苛立ちも吹っ飛んでしまった。
その日は、突然「一緒に帰ろう」と言った奈緒。
少し深刻そうな顔をして俯いていた。しかし訳が分からなかった俺は呑気にも、一緒に帰れる。と顔を綻ばじていた。
すると、奈緒が突然告げてきた。
『…翔太くん‥。別れよう?』
──とね。
『……は?‥な、何言ってるんだよ…?奈緒?』
『あたし、す、好きな人ができちゃったの!』
『……』
………好きな人って?
奈緒に俺以外の好きな人が、出来たって言うのか?
だ、だって、昨日までそんな事言わなかったじゃねぇか!
『………奈緒!』
『‥ごめんね…』
『な、泣く‥なよ』
『ごめんね!しょ、翔太く…ん、ひっく、ごめんね。ごめんな…さい翔太くん‥』
『……っ』
奈緒は何度も何度も謝ってきた。それこそ俺が「うん」と言うまで頭を上げることはなく、結局その日、俺は奈緒と帰ることが出来なかった。
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