ブラザーに愛をこめて
20
兄貴の視線が自分に向けられ、居心地が悪くなり目を逸らした。
「………ち、違うんだよ！」
「何が？」
「か、勘違いするな。俺は……お、お、俺は、」
「お前さ、あそこまで言っておきながら今更勘違いも何もないだろ」
「っ、兄貴っ！」
言えるかよ！
勘違いだってことにしてくれよ。
「素直に言えよ。翔太、お前も俺のこと……」
「違うっ！ダメだ！言うな！」
「……」
顔が熱い。
合わせる顔が無い。
もう何を言っても言い訳になる。
どうしよう。
ホントは終わりにしようとしてたのに、俺はなんであんなこと言ったんだよ。
俺のバカ！
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
「良かったね怜治くん」
「っ！」
ここでようやく俺たち以外にもいた事を思い出す。
アキナは自分の存在を忘れるなと言わんばかりに、兄貴の横からひょっこり顔を出した。
うわぁ。俺もう死にたい気分だ。
しかし思い出すのは先ほどのニヒルな雰囲気だったアキナさん。今は打って変わって穏やかに笑っていた。それが不気味とさえ感じた。
それよりも、良かったって何のことだろう……。
「翔太くんが本音を言ってくれたから」
「え？」
「多分、あれが本音だと俺は思うよ」
「っ、だ、だからあれは！」
「いい加減素直になりなよ。翔太くんがそうやって必死で隠そうとしていても怜治くんにもすぐ分かっちゃうんだよ。ーーおそらく君の気持ちに一番先に気づいていたのも怜治くんだと思うよ」
えっ……………。
気づいて…たって？
何のことだよ。
「ち、違う……俺…俺…、俺は！」
「否定してもいいけど、お前の顔真っ赤だぞ」
「赤くない！違うんだよ！」
「ウソつけ。暁名さんに嫉妬してたくせに」
「してない！」
「そんなに俺を取られたくなかった？自分の事が好きなのになんで暁名さんの言いなりなんだよって思ったんだろ」
いやだ。
兄貴の思惑通りになっている自分が。
嫉妬なんかしてねー。
取られたなんて思ってねー。
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