ブラザーに愛をこめて
19
「暁名さん、でも俺は……」
「翔太くんって、怜治くんのこと嫌ってるんでしょ?だったらもう脈なしって感じじゃね?」
「っ!」
黙れよ。
「嫌われてるのに好かれるって難しいよ。それに怜治くんと翔太くんって兄弟にしてはなーんかよそよそしいし」
だから黙れって。
口を挟むなよ。
「だから諦めなよ」
兄貴の問題だろ。
なんで関係ないアキナなんかに言われなきゃなんねーんだよ!
「報われないよ新しい恋でもしようよ!」
だから何でそれをアキナが言うんだよ!
つか、なんで兄貴もなんにも言わねーんだよ!
お前も反論しろよ。
なんで言いなりなんだよ。
ふざけんな!
ふざけんなっ!
「翔太くんを諦め…、」
「ーー兄貴に気安く触んじゃねーよ!!」
俺はリビングの扉を無造作に開けた。
ガタリ、といった乱暴な音に、その場にいた兄貴とアキナが一斉にこっちを見る。
「っ、翔太くん?!」
「俺は、今は兄貴を嫌っちゃいねーし無関心なんかじゃねーよ!」
「…………」
「不覚にも動揺しちまうし緊張もしてるし。どうしたら良いか分かんねーだけだ!勝手に人のこと誘導してんじゃねーよ!ーーー兄貴が好きなのは俺なんだよ!」
「………」
「俺だって兄貴を………、」
ーーん?
あれっ…………?
そこでハッとする。
俺…今何言おうとした?
兄貴を………の続く言葉。
俺は何を言うつもりだった。
俺はただ、アキナがムカつくこと言うし兄貴があいつの言いなりになってて、二人して傷の舐め合いみたいなことをして勝手に話を進めるから腹が立ったんだ!
友達のくせにベタベタしてて失恋の後押しなんてしやがって!兄貴だってあいつに頼りきってて、どうせ俺はお子様だよ!……ってあれ?なんか趣旨が変わってないか?
右往左往する俺。
その目の前で兄貴とアキナが呆然と立ち尽くす。
するとパチリと兄貴と視線が重なった。
「ーーーっ!」
その瞬間、顔中に熱が集まる。
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