[携帯モード] [URL送信]

ブラザーに愛をこめて
16

「あー美味かった!ごちそうさま。なんか悪かったね飯までもらっちゃって」

「良いんですよ。俺たちも飯食ったばかりだったから」

アキナは着いて早々にお腹が空いたー、と兄貴にすがりついて来た。
元々アキナの分も用意してあったところは、家事が得意な兄貴らしいが……。
しかし俺の存在なんて綺麗さっぱり忘れてやがる。
二人の世界にどっぷり入って話しを勝手に進めてるし。

「ホントに料理上手いよね怜治君!」

「そんなことないですよ〜」

「怜治君の手料理毎日でも食いたいなー!あ、怜治君、俺のお嫁さんになってよ」


……なっ!…なんだと!
男に嫁に来いなんて……理解できん。
兄貴は、な、なんて答えるんだ。

俺は兄貴の返答をそっと待つ。


「良いですよ。いつでも俺をもらってください」

「ーーっ!!」

もらってくださいっ?!
どどど…どういうことだ!
こいつ男なのに男のとこに嫁に行くのか!?
あわわわぁ……。目眩がする。


「兄貴っ!」

「あ、翔太居たんだ。何だよ」

「あれ?翔太くん居たんだ!」

「………っ」

これだもんな。
やってらんねーよ。

「な、何キショいこと言ってんだよ!」

「は?……あーもしかして嫁にいくって言ったことか?」

「っ、」

「そんなの冗談に決まってんだろ。なにお前、あれ信じちゃったのか?」

「っ、ち、ちげーよ!」

やっぱり冗談かよ!
こいつらが言うとマジに聞こえて怖い。
案の定バカだなこいつという視線が痛い。
けどてっきり笑われると思っていたのにその表情は兄貴には珍しく真顔だった。

真顔で言うなよ。
まだ笑われた方がマシだ。

「っ、…買い物言ってくるっ!」


ーーーそして俺は逃げた。

分が悪いとすぐ逃げるのは俺の悪い癖だ。

パタン、と扉を閉めると息が苦しいのも忘れて夢中で走った。
そしてホントに足がいうことをきかなくなったのでようやく止めた。

勢いよく飛び出したのは良いが、実は買い物なんてない。ただなんとなくあの二人といると息が詰まりそうになるから。
俺本当にどうしちゃったんだろう。
ぐるぐるといらないことばかり考えてしまう。

まるで何度も何度も出口を見つけようとしても、また同じ迷路に嵌ってしまう気分だ。
あー!そんな気持ちを誰にも知られたくない!
特に兄貴にはな!

しようがねー、もう少しブラブラして行くか。


さてどう時間を潰そうかな……。



[*前へ][次へ#]

16/25ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!