ブラザーに愛をこめて
15
「何も二人で一緒に風呂に入ることないだろ!母さんが帰ってきたらどうするんだよ!」
「…………」
「布団だって、客室があるんだしそっちに泊まれば済む話だろっ!何も一緒の布団に入ることないだろ!というか一緒に入るんじゃねぇよっ!おい!聞いてんのか!」
何でこんなにイライラするんだ。
アキナって聞いた途端、またリキが入ってしまう。
気がつけば、勝手に話を進める兄貴に無我夢中で声を荒らげていた。
そして俺は荒らげてたという自覚もなかった。
「わかったよ」
「え」
「風呂は入んねーよ。つか、本気で入るわけねーだろ。翔太をからかっただけだよ」
「はあ?な、なんだとぉっ!!」
「あー面白かった〜」
「てっめぇーーっ!!」
くっそー!またしてもやられた。
兄貴にはもう二度といいように弄ばれないと決めていたのに!
ぜってぇいつか仕返ししてやる!!
それまで覚えてろよ!クソ兄貴!
「翔太」
「あ”ぁ!?なんだよ!」
「……今のって…」
「はぁ?」
「………。何でもない」
またかよ。
1度口にしたのなら最後まで言おうよ。
「あっそ!それより暁名さん来るんだろ」
「あー。今度こそ風呂沸かしてくる」
「おう」
その後すぐにインターホンが鳴った。
泊まるかどうかはさておき、アキナに苦手意識のある俺は、この数時間どうすれば良いのだろうか、と模索していた。
それを考えると、胸の奥がチクチクと突き刺さるように痛かった。
調子が狂うのは、俺が苦手意識を持ってる目の前で明るく振る舞ってくるからだ。
それにアキナは部屋に入るなりお土産のケーキを差し入れしてくれた。
性格は良さそうなのに、俺はどうしてこの人と溶け込めないのだろうか。
友人ではないから溶け込む必要もないのだけど。
でも、何なのだろうか。
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