ブラザーに愛をこめて
13
兄貴は飯を食ってる間中ずっと喋り続けていた。
もう遠慮はなく俺と接することにしたのか、そこにはぎこちなさはなかった。
この数年の仲違いが嘘のようだ。
これってやっぱり愛の力なのか………。
なんて自惚れてみたり。
「…っ」
うはー!俺ってキモい。
「どうした?」
「……な、なんでもない」
やつれそう。
血の涙が出そうな勢いの涙腺を飲み込んで、途中だったロコモコ丼の茶碗を手にした。
すると兄貴が何かを思い出した。
「あー!そうだ翔太。後で暁名さんが来るから!」
ーーーは?
「暁名さんバイト帰りらしくてついでにこっちに行きたいってメールがあったからさ!」
ーーーアキナ?
「暁名さんももう少し早く言ってくれれば…、」
「な、なんで?!」
「は?」
またアキナが来るのか。
友人が他校にいるほど兄貴の交流の輪は広い。
けど家に友人を連れてきたのはホントに僅かな人だけ。
それまでは女子ばかりが来ていた。
最近アキナが頻繁に来ていたのは知ってたけど、滅多に夜に友人を連れてこない兄貴がこんなに簡単に連れてくるとは思わなかった。
「な、なんで来るんだよ」
「なんでって、…遊びに来るからに決まってんだろ」
「いや、だ、だって、これから来たら遅くなるし、それにこっちにだって都合があるだろ!」
「何を今更。もっと遅い時間に千里と長谷川だって何度も来てただろ」
「っ、けどっ!けど!」
自分の口を開けば開くほど、言うつもりもなかったことがどんどん溢れてきた。
気がつけば兄貴の声でようやく静止した。
「翔太、お前どうしたんだ」
「…えっ」
そして視線を向ければそこには不可解そうな顔の兄貴がいた。
えっ、なんだよ。
なんでそんな変な顔してんだよ。
「お前なんでそんなにムキになってんだよ」
「………………」
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