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ブラザーに愛をこめて
12

「あー……喉いてぇ!歌いすぎた」

カラオケはやっぱり2時間に限るな。
調子に乗って4時間も歌っちまった〜。
けど久しぶりに息抜きができて気分は爽快!明日は休みだし今日はゆっくり寝るとしますか。

実のところ、今日帰りが遅くなったことは好都合だった。
なぜなら、母親が恒例の単身赴任してる父親の所に行ってしまって、今日も必然的に兄貴と二人きりになってしまうからだった。
兄貴は今日バイトがないと言ってたから、早く帰ってくる筈なのだ。

いつもながら落ち着かない日だ。
忙しなく右往左往してる自分がとてつもなく滑稽に見えて逆に笑えてくる。
そう自虐的になっていればいつの間にか帰路についていた。
まぁ……往生際が悪いのは今に始まったことではないし。


「おー、翔太帰ったのか?」

「……た、ただいま」

「ずいぶん長い間いたんだな」

「ま、まぁ……」

俺、滑舌悪い。
多分緊張してるんだ。

「お前試験どうだったんだ?」

「えっ…あー、まぁなんとか大丈夫じゃないかな」

「相変わらず余裕だな」

「…べ、別にいいだろ!俺兄貴と違って普段から努力家なんだよ!」

「それもそうだな!」

そう言って、ケラケラとおどけて見せる兄貴。
こいつ腹立つなー。

「さっさと飯作りやがれ!」

「もうできてるぞ。今日はロコモコ丼」

「………」

こういう時に限って隙がない兄貴に心底ムカつく!
ただの八つ当たりだけど。
俺には冷静でいられる余裕がないから。
何度も同じ場所を行ったり来たり、兄貴の顔なんてまともに見られるかよ。
見たらきっと墓穴を掘りそうだ。

そういう時は決まって自分に呪文のようなもの唱える。
気のせいだ……。
気のせいだ……。

ーーー気のせいだ!

やめてくれ。
俺は兄貴とは違うんだ!
俺は少しでも兄貴が楽になるように気持ちに応えてるだけなんだ!決して兄貴と同じ気持ちなんて持ち合わせていないんだ!

絶対ないんだ。

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