ブラザーに愛をこめて
11
帰り道は静かだった。
さすがに空気を察したのか、兄貴もそんな俺の横を黙って歩いていた。けど、多少気になるらしいのか時折俺の様子を窺うような視線も感じていた。
それを俺は、気がつかないフリをした。
けど一方で…本当にそれで良いのか。
そう思う自分もいる。
俺はなんて残酷なんだ。
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「よし、ペンを置け。解答用紙を後ろから集めろ」
中間テストが終わった。
筆記用具をしまい机に突っ伏しながら腕を伸ばした。
「翔太!どうだった?」
「えっ、あーまぁ、やるだけのことはやった」
「うわぁ…そういうセリフ1回言ってみてぇ〜」
「言うだけなら簡単だぞ」
「…………」
テストが終わると渡辺がやって来て俺を恨めしそうな顔で見ながらそう言い放った。
てゆーか、別に普通に授業を聞いてれば問題ないと思うのに、なんでこんなに睨まれなきゃいけないのか…。
「なぁなぁ早くカラオケ行こ!」
「お前はそればっかだな」
「がっ…広瀬!藤岡!」
既に遊ぶことしか頭にない渡辺に、後ろからやってきた広瀬と藤岡は呆れた顔だ。
気持ちは分かるが俺もちょっと呆れたぞ。
「渡辺。一番浮かれてるお前が赤点だったら笑えねーからな」
「…………」
「……なんでそこで黙るんだよ。…はっ!お前まさか、」
「違げぇよ!ちゃんと勉強したし!」
「いやぁぁ、マジ怪しい……」
「だ、大丈夫だよ!……多分」
頼りねーな。
と、渡辺に苦笑いをする俺。
まぁともあれ、窮屈な試験も終わったことだし俺たちはカラオケに行くことにした。
意外だったのは、委員長の藤岡がカラオケが好きだったこと。そしてめっちゃうまい。
偏見なのかもしれないけど、委員長という肩書きのある奴ってカラオケ初心者で且つ音痴のイメージがある。マジで偏見だ。
だって俺も周りにそう思われてたみたいだし。
でも俺は劣等生ではないが決して優等生ではないですから。
カラオケは龍ともしょっちゅう行ってたし。
えっ、歌唱力?
そんなの決まってんだろ!
「翔太の音痴〜」
「うるっせぇ!」
歌唱力はありません。
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