ブラザーに愛をこめて
08
中学生の頃の俺は荒んでいた。
負い目があったんだ。
だから翔太にすら八つ当たりばかりしてしまっていた。
『ちょろちょろ付いてくんじゃねーよ!うぜえんだよっ!』
『兄、ちゃん…』
『バカじゃねーの? ったく‥ガキはすぐ泣くから嫌いだ!』
『怜治っ!翔太はまだ3年生なんだぞ。中学生にもなって弟をいじめるんじゃない!』
『‥……っ』
そんなつもりはなかった。可愛がってるつもりだった。
けど、そう思った時にはすでに遅かった。
翔太は、完全に俺を避けるようになっていった。
俺を怖がってる。そんなような瞳をしながら、親父が居ないときはお袋の後ろに隠れていた。
けど、それが面白くなかった。
『こそこそ隠れてんじゃねーよ』
『っ!』
お袋がいない日、あいつがリビングに顔を出すのを見計らって、姿が見えると容赦なく翔太を突っついてやった。
小さい背中は分かりやすいくらい肩をびくりと揺らした。
『俺の部屋に来い』
『‥……』
『来いっつってんだよ!』
『っ、』
しまった。
つい、ガキ相手にムキになってしまった…。
けど翔太がなかなか俺の部屋に来ようとしないから腹が立った。
逃げようとするあいつを捕まえ強引に自分の部屋へ連れてった。
『翔太』
『‥…な、何』
『‥…』
また怒られると思って、節目がちになる視線がまた面白くない。
『おい翔太。話しを聞くときくらい人の顔見ろよ』
『…』
結局、俺と翔太の関係はそれ以降深まることはなかった。
心のどこかで、置いてけぼりを感じて虚しく感じた日もあった。俺は弟にまで見放された。
そして、その鬱憤を晴らすかの如く、俺は他校で出来た友人の家へ入り浸りの日が続いた。
母親は泣いていた。けど、俺の心には全然響かなかった。それどころか、どこか冷めたような視線でその光景を眺めていた。
恨むんなら、親不孝な息子を育てた自分達を恨め。
そう考えるようになるくらい俺の心はすっかり荒んでいた。
今思えば、単なる理由なき反抗だったのだと笑い話にもできるが、代償はあまりにも大きすぎた。
「翔太」
「‥…なんだよ兄貴」
「‥……ん?」
「なんだよ。今呼んだだろ!」
「いや、何でもない。呼びたかっただけだ」
すこしでも翔太と一緒にいる雰囲気を味わいたかった。こんなの気持ち悪いんだと思うけど、一度自覚してしまった感情を抑えることなんてできなかった。
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