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ブラザーに愛をこめて
06

「‥…っ、」

な、何言ってんだ俺…!
今…何考えてたんだろう!別に兄貴が誰とどこで何してようが、俺には関係ねーじゃん!
バイトだって兄貴の勝手だし。
あんな密着くらい、ふざけてたら誰でもするだろうし。


「翔太くん」

「…っ、な、なんですか…?」

「悪いんだけど、怜治君を少し借りてもいいかな?」

「…‥は?」

「怜治君、バイト先ですんごくモテるんだけど今日お休みだってお客さんに言ったら騒がれちゃってさー!だからこれから怜治君を連れて行こうかと思ってさ!」

「‥……」

そう言って、人の良さそうな笑顔で兄貴の肩を抱くアキナ。
少しばかりアキナより華奢な兄貴の身体は、まるでアキナに頼りきったように寄り添っていた。
その姿が無性に苛ついた。

「な、なんで、いちいち俺の許可が必要なんですか!」

「一応怜治君の保護者代わり?」

「…っ、別に勝手にすれば良いじゃないですか!」

「あ〜そうだね!」

「‥……」

なんだろう‥。
心なしか、アキナの俺に対する態度が兄貴に対する態度とえらい違うように思えた。
顔は笑っているけど、この人の本性が見えない。

「さてと、じゃあ晴れて怜治君の家族の許可も得たことだし、そろそろ行こっか?」

「え…でも、」

腕を強引に引っ張るアキナに、兄貴の視線が俺を見る。

「翔太くんが良いって言ってるんだからさ!ねっ翔太くん?」

「俺なら、勝手に帰るから…」

「ほらね?翔太くんもこう言ってるんだし、早く行こう?」

「…‥は、はい」

「じゃあ翔太くん、またね!」


だんだん小さくなる背中を、最後まで見届けることをせず、俺は戻ろうとしていた目の前の喫茶店に入ることにした。
腰を落ち着かせていると、兄貴からごめん、とメールが届いたが返信する気にはならず、ひらすらそのメールを眺めていた。

出来れば、アキナには二度と会いたくないと思った。
分からないが、アキナの俺を見るあの瞳が苦手だった。
いや、怖かったと言った方が正確かもしれない。
でもこの調子だと、近い内にまたアキナに会うような気がするのは俺だけだよな?だよな?



――と、限りなくゼロに近い俺の願いは奇しくも、アキナにあっさり打ち砕かれることを俺はまだ知らないのであった。

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