ブラザーに愛をこめて
04
まぁ、例え俺が壊れた人形であろうと翔太を好きであることに間違いはないんだ。
この気持ちに嘘はない。
翔太が大好きだ。
ずっとずっと。
「‥…ぷっ、人が告白してんのにだんまりかよ」
「うっ、…あ、ありがと‥」
「…‥えっ、」
「い、いや…、そういえばまだちゃんと言ってなかったからさ。兄貴とはいえ、俺を、なんつーか‥そ、その…‥す、好き?になってくれたわけだし…。とりあえず…‥さ、さんきゅ」
「………‥」
こいつ…。
俺が悩んでたの気付いてたな。
今のは、翔太なりの俺への励ましのつもりだったんだろうな。
翔太のやつ。こういうの苦手なくせに無理しちゃって…。
しかもあれは絶対、言って後悔してるって顔だな。
耳まで真っ赤にしてやがる。
可愛いやつ。
「‥…じ、じろじろ見んな!」
「はいはい」
「笑うな!」
「…‥はいはい」
「笑うなっつーの!」
にやけちゃう。
俺もどうしようもない奴だ。
こんな弟にうつつ抜かすなんて。
――中学生の頃だったら考えられなかったな。
「家帰るか」
「……‥。いや、店戻ろうぜ」
「え?」
「せっかく、頼んだのに飲まずに帰るのも店員に悪いし…。これからも兄貴にいいようにバカにされるのは癪だし」
「…‥」
ほんっと従順なやつ。
喋るとぶっきらぼうで素直じゃないけど、それが時として心にすぅっと滲みる時がある。
上手く言えないけど。
「な、なんだよ…!」
「…‥。いーえ。可愛い弟の仰せの通りにいたしますよ」
「っ、…」
「兄ちゃんは、いつでも!」
「‥…うわ、キモッ!」
どんなに望んでも、翔太が“兄ちゃん”と再び呼んでくれる日はきっともう来ないと思う。
けど、俺はそれを強要しようとはもう思わなかった。
だってそれは“兄貴”と呼んでくれる、今の翔太を否定することになるから…。
でもそんなことない。
今の翔太だって俺は好きだから。
「ひでえ言われようだな…」
「黙ってろ!」
俺は改めて再認識をした。
そして、そう心の中で一つの決心をすると、翔太と再び喫茶店に入ろうとした…――
「怜治君!」
しかし呼ばれて俺は足を止めた。
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