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ブラザーに愛をこめて
03

「何で店出るんだよ」

「‥………。てめぇには危機感というのがまるでねぇんだな」

「…‥?、あぁ」

ああ‥って…。
暢気すぎにも程がある。

「きもいセリフ吐き捨てるな!」

「はあ!?」

「帰る」

「ちょっ、おい翔太!」

これ以上あいつのペースに流されてたら、心臓がいくつあっても足りねーよ。俺、絶対に顔が赤くなってるし。熱い。
こんな顔見られたら癪だ。
いやだ。いやだ。

絶対にいやだっ!

「翔太待てよ、なあ…」

「知らねーよ」

「俺、また悪い事したか…?」

「‥………」

「なあ、黙って帰るなよ…。もっとお前と話がしたいんだ」



 ◇◆◇


お前のことがもっと知りたい…。

翔太は、自分のことをちっとも話してくれない。
俺はこんなにも自分のことをたくさん言葉で伝えようとしてるのに、翔太はなかなか俺に心を開いてはくれない。それはまるで俺を遠ざけるみたいに、壁を作ってるようにも思えた。
俺はひどく落ち込んだ…。

どうして、翔太は俺から逃げようとするんだろう…。
俺が一歩翔太のエリアに入ろうとすると、あいつは一歩下がって逃げてしまう。俺はやっぱり嫌われてるのかな、なんてネガティブなことを考えてしまう。こと翔太に関しては俺はいつもそうだ。

俺って…いつからこんなに女々しかったっけ?
翔太のことを考えるだけで胸が苦しくて、無性にあいつのことを抱きしめたくなる。それが俺の息苦しい発作を止めてくれる最高な特効薬。
俺を苦しめるのも心地よくさせるのも全てあいつ次第…。


「ご、ごめん…」

「‥……翔太」

「今のは、言い過ぎた…」

「‥………」



あー、忘れてたよ。
翔太にはいつも驚かされるんだ。

「俺も悪かった」

「あ、兄貴」

「ちょっと焦りすぎた」

きっと翔太ならいつか何でも話してくれるようになるんだ。
どうしてそんなことも忘れていたんだろ…。

あいつはいつもそうだった。
真正面からきちんと受け止めて壁にぶつかって自分で解決する。
だから、今回もきっと俺の自分勝手な感情を懸命に受け入れようともがいてるんだ。ホントは俺の異常な感情も怖くてたまらないはずなのに、あいつは従順にその約束を守ろうとしている。

「翔太…ごめんな」

「っ…」

好きになってごめん…。
でも俺はお前のことが好きでたまらないんだ。お前が傍にいないと俺はきっとダメになる。
俺は弱いんだ…。

「翔太…好きだよ」

いつだって、そうやって愛を口ずさんで言葉にして繋ぎ止めておかないとお前がどっか行っちゃいそうで恐いんだ。
好きだ…。
愛してる。
まるで壊れた人形だ。

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