ブラザーに愛をこめて
20
「うひゃひゃっ!…あ、おーい翔太。あっちに紫芋のソフトクリームがあるから行かねえ?」
「俺はいい」
「そっ!じゃあ俺たちちょっと行ってくるから荷物見といて」
「ああ―」
俺がそう返せば、友人たちは即座にアイスクリーム屋さんへと駆け込んでいった。
ったく…子供だよな。
あーあ。
カニにメロンに、えぇと…あっ、ラーメンだ。それに特大パフェ。えーえー。好きな物を食べるだけ食べましたよ。
楽しいはずの修学旅行。いや楽しんでるよ、それなりには。だけど、満腹感はあるのになんだか物足りなさを感じるんだ。
はぁ…俺何やってんだろう。
てか、またウジウジしてきた。
(あっ、龍だ)
きっと――…
「よっ、園田」
「…っ、倉橋クン!」
俯いていれば、ごく自然に肩をぽんと叩かれた。顔を上げるとそこには軽く笑みを浮かべた倉橋クンが「よっ」と手をあげていた。
「一人で何してんだ」
「あっ…えぇと。グループの奴らが今アイス買ってるから、その間荷物番してんの。倉橋クンは一人で何やってんの?」
「え?あー、俺は集団とかってかったるいから単独行動」
「‥…そう」
なんか、らしいや。
倉橋クンって集団で歩いてるイメージないもんな。
倉橋クンがやると、なんかそれすらもカッコ良く見えるよ。
「そういえば。倉橋クンさっき告白されてたでしょう?」
「何で知ってんだ」
「だって告白したの俺のクラスの女子だもん。泣いてたし」
「なるほど」
「罪づくりだね〜」
「お前なぁ…」
頭をコツンと叩かれた。
でもそれが少しだけ嬉しかった。
「あーったく…。よりにもよってそんなとこ見んなよ…」
「いや、だって倉橋クンって目立つからすぐ見つけちゃうんだよ! しかも俺、多分倉橋クン探すときは誰よりも先に見つけられる自信があるし!てゆーか、倉橋クン専用電波とかでめっちゃ感じそ〜。うはははっ!」
「…‥っ」
いやマジで。
だってこんだけ何度も遭遇するわけだから、俺か倉橋クンに、そういう引き寄せる電波があるとしか思えねえだろ。
クシャッと弾けたように笑う俺。しかし、その傍らでは目を見開いている倉橋クンが俺の顔をじっと見ていた。
「ははははは…‥、え?あれ、どうしたの?倉橋クン」
「っん、あ…いや。 まぁとりあえずお前の眼中には入ってるんだなぁ、と思ってさー」
「へ?何が?」
「…気にすんな。独り言だ」
「えぇー!またそれ?」
いつか倉橋クンが、屈託なく俺に何でも打ち明けてくれる日が来ると良いな…。
秘密主義な倉橋クン。
ベラベラとお喋りな龍とは違って、極端に人を避けるような行動を度々している。
時々、そんなの寂しくないのかな…なんて、俺は同情的な目で見てしまう時がある。
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