ブラザーに愛をこめて
05
「あっちぃー!」
「当たり前だろ!この暑いのにお前が走ったからだろ!」
と、言われた俺はまたしても、バシーンと龍の鞄の突っ込みが飛んできた。
だから痛いんだよ、それ。
「だからゴメンってば!龍。だって兄貴がムカつく事ばっかり言わなきゃ、俺だって頭に来なかったんだ!」
「翔太が悪いんじゃないの?」
「なにおぅ!!!」
龍のイジワルゥ…‥!
それに俺は悪くねぇもーん。
「だってぇ翔太、怜治さん置いて学校行ったんだろう?それってひっどーい!」
「……‥」
…龍、なんか‥口調が兄貴と似てきた気がするんだけど。
語尾を伸ばすところなんて、まんま兄貴の口調だし。
「翔ー太、ひっどーい!」
「だああああ!やーめーろー!兄貴を思い出すぅ!!!」
…おぉ、おぞましいぃ!
その口調を聞いたとたん、兄貴が目を細めて口を歪ませた顔が一気に浮かんだ。
そう、俺をイジメ尽くす時の兄貴の顔が、それだ。
「うぅ〜、悪寒がした。なんか、いやな予感がするよ。…あ、龍、今日も龍の家に泊まって良いかなぁ?」
「あぁ、それはダメ!今日は彼女くるし…。」
「……」
龍なんて、彼女に振られてしまえぇー!バカ兄貴に彼女を奪われてしまえぇー!!!
と、言うのは冗談だけど、ちょっぴり羨ましいと思った。
あの時、俺は付き合っていた彼女に泣きながら振られた。
当時ものすごく後味が悪かったのを覚えている。
だから、龍の今幸せそうな顔を見ると羨ましいんだ。
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