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ブラザーに愛をこめて
16

こうして怒鳴ってから自分のやったことに気付いてしまう。

楽しく盛り上がった雰囲気は、俺の登場と共に沈黙へと変わっていってしまったことを…。
そして中では、奈緒の言うとおり愛子さん長谷川さん千里さんが唖然としてる姿も目に入った。

(あーあ…)


「ひどい。そこまで言うことないじゃない!いくら園田の弟だからってそこまで言わなくても…」

「先に奈緒先輩のプライバシーを侵害したのはあんただろ!」

「うぇーん、園田ぁ〜!あんたの弟が私を苛めるう〜」

理恵っていう人は、兄貴に腕を絡ませると泣きついた。兄貴も絡みついた理恵に視線を向ける。
その姿がなぜかイラッとした。
兄貴に頼らず自分で言えよ。と心の中で悪態を吐きながらピクリと眉をしかめる俺。
しかしそれも束の間、兄貴は触れていた理恵のその手をおもいきり振り払い言った。

「今のは理恵が悪い。お前は支倉に謝るんだ」

「園田っ…で、でも、」

「謝れ!お前がすぐにやめると思って俺は止めなかったのに、お前は支倉に問い詰めることをやめなかった!そんなやつに好かれても嬉しくねえんだよ!」

「‥…っ、」

「帰れよ」


――そう言われて理恵は、目に涙を溜めると横にあった自分の鞄を持って颯爽と兄貴の部屋を出て行ってしまった。


「あーすっきりした!正直あたし、理恵ってあんまり好きじゃなかったから気持ちよかったぁ」

「あたしもぉー」

「こないだなんてさ…――」

「えぇーマジでっ!?」

奈緒にあれだけむちゃくちゃ言っておいて、謝罪もせず出て行ったことには腹が立つ。
立つし、自分から理恵って人にケンカふっかけてしまった。
しかし、そうとはいえ、これだけ責められてる姿を見ると少し前の自分と重なってしまい、気の毒にも思えてきた。

きっとあの人は、ホントに兄貴のことが好きだったんだろ。だからこそ兄貴を翻弄した、と思い込んだ理恵は、奈緒に暴言を吐いたんだと思う。
だからって許されることじゃないけど、好きな人に言われたら。

ショックだろうな…



「なーに落ちこんでんだよ」

「っ、…兄貴!」

どれくらい経ったのだろう。自己嫌悪に自分の部屋で一人頭をかき混ぜていると、兄貴がノックもせずに俺の部屋に入ってきた。

「さっそく自己嫌悪?」

「…見んなよ。てか、勝手に入るなっつってんだろ。早くみんなのとこに戻れば」

「とっくに帰った」

「…へ、へぇー」

自己嫌悪ていうのなら。
理恵に言ってしまったことよりも、理恵の気持ちが痛いほど理解できてしまったということ。

「お兄様が慰めてやろうか?」

「いらねえよ!」

兄貴が、俺から浴びせられた数々の暴言に傷付かなかったはずはない、と理解してしまったこと。


なぁ兄貴。
俺が笑うだけで幸せだったか?
今まで俺が言ったどんな言葉に傷ついたんだ?
そんなつらい思いばかりさせた俺を、今でも好きでいることは苦しくないのか?

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