ブラザーに愛をこめて
15
「てか、やっぱり奈緒のあの噂ってホントだったんだね?」
「――…え?」
「理恵!」
彼女のその意味深な発言に声を荒げたのは愛子。
それと同時に、部屋の空気が一気に重苦しいものとなった。
しかしその空気の中、不思議そうに首を傾げる奈緒。
「…‥何のことですか?」
「あんたが園田の弟と付き合ってたのに、園田とも付き合ってたって噂よ。 きゃははは。ていうかさぁー、張本人が知らないってどんだけ鈍いわけぇ?あんた」
「――っ!」
「しかも別れた後はちゃっかり武藤くんとも付き合ってるし」
「‥……っ、」
「理恵!大概にしなさいよ。そんなことあんたにはまったく関係ないことでしょっ!」
「だってぇー。あたしの友達でも園田が好きって子多かったのに、何でこんな鈍そうなぶりっこに二股かけられなきゃいけないわけぇ?あったまきちゃう!」
「…っ、」
『私、好きな人ができたの』
『‥……』
傷つけちゃった。
それは紛れもない事実。
だから私は何も言えなかった。
きっと、これは自分勝手だった今までの私への罰なんだ。
私の―…
「いいかげんにしろよっ!」
「っ、…」
ドアが力一杯開いた。
そこに立っていたの翔太だった。
目を見開いたまま唖然とする奈緒を通り過ぎると、翔太はすぐさま理恵を見つけおもいっきり睨みつけて指をさした。
「おいあんた!大の大人が後輩いじめかよ!ああっ情けない!たかが男のことなんかで、しかも兄貴のことなんかで!」
「な、なんですって…、」
「だいたい兄貴の何が良いわけ?こいつ、勉強も出来ないし性格も悪いし意地も悪いし最悪だぞ?それでも良いわけ?」
「…」
「そ、それに…!この人は二股なんかかけてねぇんだよ!俺が勝手に好きになっただけで、奈緒…、奈緒先輩はずっと武藤先輩一筋なんだよ!勝手に妄想して勝手に出しゃばってんじゃねえよっ!」
愛の形なんて人それぞれだ。
俺は俺のやり方で、奈緒を精一杯愛したつもりだ。けど、そういう風にできたのは全部お前のおかげなんだよ。
人に優しくできたのは奈緒がいつでも傍にいてくれたからだ。
だからこそ、俺はお前には幸せになってもらいたいんだ。
もう自分のせいだと責めずに俺のことを忘れて、いつも笑っていて欲しいんだ。
『なぁ奈緒。明日はさ、部室で待ち合わせにしないか?』
『…何で?』
『誕生日一緒にお祝いしよ』
『っ!…うん!』
俺は、お前の笑った顔がいつだって好きだった。
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