ブラザーに愛をこめて
08
「ははははははっ」
「…――」
テレビの前で大笑いしている兄貴を横目に、俺はこっそりと思案していた。
自分の兄貴だけど、今でもやっぱりよくわからない男だ。
何が、ていうとやっぱり一番最初に思うのは、俺をなぜ好きかということからだ。
「ん?どうした翔太」
「っ!…く、口に付いてるぞ」
「マジで」
元々変わり者ではあったが、実の弟を恋愛対象にしようとは誰も思うまいだろ。
やっぱ奇人変人というのは、恋愛の仕方も変わってるのかも。
よくよく考えれば兄貴の友人もそこそこ変わり者が多いし。
兄貴から告白をされた俺は、一度ならず二度は兄貴を振ってる。
けど一度は逃げ出した恋から、兄貴は立ち直り懲りずに何度も俺を好きだと言った。
自分の立場に置き換えてみた。
けど、俺なら絶対に無理だ。
「翔太、アイス食うか」
「え?…う、うん」
奈緒の時がそうだった。
好きな人ができた、と言われたとき、俺は彼女の気持ちを優先してすぐに別れてしまった。
自分の気持ちは後回しだった。
付き合ってた時はあんなにもストレートに言えた本当の気持ち。
けど別れてからは、三年も未練たらしく思い続けてたのに、彼女に自分の気持ちを打ち明けることがとうとう出来なかった。
いや、多分それが当たり前なんだと思う。
「かあー、頭がキンキンする」
「あ、あぁ…」
現に兄貴だって、俺に打ち明けるまでに長い年月かかったんだ。
相当辛かったと思う。
自分の目の前で、自分の好きなやつに彼女を紹介されることがどれだけ苦しいことか…。
決して自惚れてるわけではないけど、残酷だったと思う。
それでも挫けず諦めなかった。
「そんなに俺を好きなのかよ…」
「え?」
「何でもない…」
友人よりも大事なやつかよ。
彼女から奪うほどのやつかよ。
女の子より優先しちゃうようなやつかよ。
兄貴の気持ちがわかんねえよ。
「――翔太、どうした?」
「…っ、え?」
「顔色悪いぞ?」
「‥……」
どうしてそこまで俺を好きだと言えるんだろうか。
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