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ブラザーに愛をこめて
07

「な、名前って…何だよ」

「俺のこと怜治って呼ばないか、つったんだよ」

「‥…な、何を藪から棒に‥」

カチッとドライヤーのスイッチを切ったのと同時に、そう言って笑った兄貴。またワケのわかんないことをいう兄貴が俺にはさっぱり理解できなくて唖然と双眸を丸くさせた。
しかし、そんな俺を知ってか知らぬかあっけらかんと言い退けた。

「んー。なーんか最近、兄貴って呼ばれるだけじゃあ物足りなくなっちゃってな」

「はっ…?」

「翔太が不足してる」

「ふ、不足って…、」

だから何でそう、お前は唐突にナチュラルにドン引きするようなこと言えんだよ!

「お前アホかっ!」

「お前じゃない。怜治だ」

「れ、れい…、ってそうじゃなくて!今さら兄貴に向かって名前なんか呼べっかよっ!」

「名前呼ぶだけだろ」

「‥……」

ただの兄弟であれば、呼ぶのは容易いが、それが下心のある人間だったらどうよ。
絶対何か企んでるだろ、って疑いたくなるだろう。
実の弟に向かってムダに好き好き言ってるヤツなんて信用できん。


「ぜってー言わねえ!」

「…ふーん。じゃあ俺が翔太に対して、本当はどういうことしたいか教えてあげる。弟だって容赦しないよ。 ――まずは、翔太を押し倒して口の中を俺の舌でかき混ぜたら、お前を乱れさせて翔太の中を俺のモノでぐちょんぐちょんに」

「あああああああああっ!やめろやめろやめろやめろっ!」

「怜治って呼んでくれる?」

「…そ、それは…」

「翔太は言った。“兄ちゃん、気持ちいい。もっともっと俺をいじめて”俺はその言葉に――」

「ああああああっ!わかったあ、呼ぶっ!呼ぶから、俺をお前のキモい妄想に巻き込むなっ!」


ああ最低だ。
ううっ…やっぱこいつ、根っからの腹黒い男なんだ。
人の弱みにつけ込んでまで自分の名前を呼んで欲しいのかよ。
だいたいにして妄想がキモい。
ドン引きを通り越してる。

「じゃあ、今から呼ぶから、翔太も続けて呼べよ」

そう言って目をキラキラさせる兄貴が、期待を含んだ眼差しをしていて果てしなくキモい。

俺は心の底からそう思った。

「翔太」

「れ、れい、じ」

「ははははっ。お前が怜治って呼ぶとなんか新鮮な気分だ。なぁ?もう一回。翔太」

「‥…れい、じ」


なんだこれ。
超恥ずかしいんですけど。
マジ、勘弁して下さい。

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あきゅろす。
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