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ブラザーに愛をこめて
06

「ふぅ…」

着替えを終え一息吐こうとソファーでリラックスしていた。
兄貴は風呂に入ってる。
母さんも今日は帰りが遅くなるようだったので、買い物を済ませた兄貴が風呂から出たら夕飯を作ってくれるらしい。

よりにもよって、こんなもやもやした気持ちの時に兄貴と2人っきりにしないで欲しい。
気持ち悪いし吐きそうだ。

誰か呼ぼうかな。


「翔太ー!悪いけど、ドライヤー持ってきてくれないかー」

「はあ?」

兄貴が出たらしい。
風呂の扉が開いたのと同時に兄貴が俺にそう言ってきた。
なんだよ。人がまったりとしてる時に邪魔しやがって。

けど優しい俺は文句を言いつつもソファーの横に置いてあったドライヤーを持っていった。



「ったく、ドライヤーくらい自分で取りに来いよな」

「何言ってんだよ。ソファーに持ってったのは翔太だろ?」

「……っ、」

「いつもテレビ見ながらドライヤーかけてるのはどこの誰なんですかね。ねえ?翔ー太」

「‥………」

言い返す言葉もありません。
確かにテレビを見ながらドライヤーをかけてたのは俺です。
けど非を認めたくない俺は兄貴を思いっきり睨みつけてみた。

「お前って俺に抵抗するとき、ワンパターンだよな」

「うるせっ。さっさと着替えて飯作れよ!このバーカっ!」

「…ぶっ、」

「てめっ、笑ってんじゃねえよ」

肩を震わせ口元を押さえる兄貴に、眉を吊り上げた俺。
羞恥に顔を赤くする俺に気を良くしたのか、兄貴は腹を抱えて笑い始めやがった。
本当にムカつくヤツだ。


暫くすると落ち着いたのか、涙をうっすら浮かべた兄貴が俺に視線を寄越して言った。

「はぁ。自分の兄貴に向かって、てめぇじゃないだろ?」

「お前なんか、てめぇで十分なんだよっ!」

「ホントに口が悪いな。昔みたいに可愛く“兄ちゃん”って呼べないのか、お前は…」

「ぜってー言わねえ」

あー鳥肌がたつ。
兄ちゃん、なんて最後に呼んだのは何時だったっけ?
小学校?中学だっけ?
いやいや、中学の時にはすでに兄貴って呼んでた気がするな。


「翔太」

「あ?」

「だったらさー俺のこと、怜治って呼ばないか?」


‥…………。



「はい?」


――俺は唖然とした。

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