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ブラザーに愛をこめて
04

「ただいま」

「‥……」

な、なぜだ。
こんなに帰り道が長いと思ったことは、田舎に住む親戚ん家に行って以来ないと思う。
5分が1時間に感じたし。

「お袋出かけてるみたいだぜ?」

「…」

「ほら、書き置き」

アホか。
あくまで5分は5分なんだから1時間なんてないない。

「翔太?」

「…」

「しょーた!」

「あたっ…‥。へ?あ、あー、母さん出かけてるんだ…」

「……」

明らかに上の空だった俺に、兄貴は眉の根を寄せた。
だって兄貴の呼びかけにも相槌を打つを忘れるくらいだし、叩かれたのに言い返す気力もなかったくらいだし。
完全に心此処にあらず状態。

そんな俺の態度に兄貴が不機嫌になったのは言うまでもない。
そして不満をぶつけてきた。


「お前さー、最近変じゃない?」

「…え」

依然と不機嫌オーラは崩さないままの兄貴が腕組みそう言った。

「しょっちゅうボーっとしてるし。会話も少ないし」

「さ、さあ?…俺には何のことだかさっぱり分かんねえ」

「…自覚ないのか?」


――ウソだ。
自覚はなんとなくある。
でも、俺自身がまだ消化できない事実を兄貴に細かく話せるかと言えば、それは無理な話だ。
下手すれば兄貴に誤解を招く。

「‥……」

「それ、こないだも言ったけどホ、ホントに何でもないからさー、兄貴も気にすん――」

「じゃあ何で俺を見ない?」

「っ!!」


背中がひやりとした。

兄貴の双眸が俺の瞳を射抜いた。
前のようにあからさまに当人を避けていたわけでもない。きっと他の人から見れば気付かない程度の、ちょっとした気まずい空気を醸し出しただけ。
でも、兄貴は俺の感情をすべて見通していたんだ。

それだけで、俺への想いがどれだけ強いか思い知らされる。

「今度はなんだよ」

「‥…え?」

「前は俺が翔太に好きだと言ったから避けてたんだろう?今度は何で俺を避けてんだよ」

「っ、別に…」

「なあ?言えって。何でそうやって微妙に距離置こうとすんだよ」

「…だ、たから何でもない…」

「――翔太っ!!」



言い逃れしようとした。
しかしそれと同時に、兄貴がそんな俺に怒声をあげた。
ビクッと肩を震わせた俺の前には、苛立ちの色を濃くさせた兄貴の表情が目に映った。

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