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ブラザーに愛をこめて
03


「彼氏がさー、超鼻息荒くしてキス迫ってきたの」

「マジで!?最悪ぅ〜。そんでその彼氏とはどうなったの」

「別れた」

「ぇえー!」



「――…」

ぇえー、と言いながらも何気に顔が綻んでるし…。
女の子って、ホントにああいう類の話しが好きだよな。なんとなく男が気の毒だ。


あー…いや。それを考えればだねえ、こんなことで頭を抱えてること自体が間違ってる。

俺なんか実の兄貴に告白されましたよ。えーえーそりゃあもう、はっきりきっぱりとね。
ちなみにキスもしました。
はっ、俺だってもう17歳なんだ。そういう過ちの一つや二つどうってこと無かろうに。
俺には彼女だっていたんだ。まぁキスはしなかったけど。

「っ!」

と、とにかく!
それを小学生みたいにたかがキスなんかで大騒ぎしちゃってさー、

ったく、みんなホントに――

「困ったちゃーん」

「何やってんだ、お前」

「――っ!!」


帰り道、一人で帰路につくと今日あったことを思い返していた。

情けないことに、俺は恋愛経験の場数を踏んでいないせいか、改めて慣れない心がざわざわ穏やかではなかったのだ。
つか、過剰反応していた。

17歳のくせにその過剰さに、少しは虚勢だって張りたいもの。でも口には出せない。だから心の中でちょっとだけ強気になってみた。
しかしあまりに感情的になり過ぎてつい口からポロッと独り言を唱えてしまった。そしてその矢先に、返ってくるはずもない相槌が後ろから返ってきた。

何となく誰だか分かっていた俺は油が切れたようにギギっとぎこちなく振り返った。


「やっぱ翔太だ」

「っ、ぎゃあああああああっ」

やっぱ兄貴だ。
兄貴のその言葉、そっくりそのままお返しいたします。

「‥…俺は化け物か」

「なっ、ななななな…んで、」

「俺も今日は早かったんだ。それでどっか寄ろうかなって思ってたら、お前の後ろ姿が見えたから追いかけてきた」

「‥…そ、そう」

ノロリと歩いてた自分を恨む!
な、なんだよ、この偶然。
俺の運の悪さも筋金入りと来たもんだな。ははははは。

「帰るか?」

「えっ…あ、あぁ…帰ります」

「ぷっ。また敬語かよ」

「‥………」

やかましい!
人の身の振りに気付かないとは、兄貴も相当鈍いと思う、と身勝手にも頭に血がのぼってた俺はそう思ってしまった。

いやあ、つか身の振りって何の話しだよ。
あー…頭が痛いよ。


「はぁ…」

「…なんだお前。人の顔見てため息吐くなよ」

「なっ…、つ、吐いてねえし」

「ホントかね〜?」


――いや、ウソです。
俺、めったくそ吐いてました。

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