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ブラザーに愛をこめて
02

「お前、何か機嫌悪くない?」

「べ、別に!悪くねえし」

「そっか」

「っ!」

うっ。何だよその笑顔。
あぁ…やめろっ。何か知らないけどまた胃がキリキリしてきた。
うわぁ、いててててっ。
堪えるため眉を顰めた。

「翔太、どうした?」

「…っ、いや、何でもない!」

「でもお前…」

「大丈夫!大丈夫!マジでノープロブレムっ!大丈夫!――じゃあ、俺こっちだからさ!」

「‥…あっおい!」


そう、大丈夫なのだ。
俺はこう見えて、兄貴よりもしっかりしてるし。
大船に乗ったつもりでドーンと構えてりゃどうって事ない。

そう、大丈夫なんだ…‥

大丈夫なんだ……


大丈夫…



「ぜぇぜぇぜぇ、はぁはぁ」

…なわけがあるかっ、ボケッ!

兄貴と分かれて程なくして、全速力で高校に向かって教室に入ると、ドアに背を預け息切れ寸前。
うぉぉ!緊張したぁ。
兄貴に告白された時なんて目じゃないほどに緊張した。
つか、何で今さら緊張?
んなの、わかんねえよっ!

「〜〜っ、」

ぐはぁ、運動不足だ。
ホントに苦しい…。
やっぱり運動でもしようかな。



「――園田」

「っ、ぎゃあああああっ!」

自分の体力に悲観していると俺の教室のドアが開いた。
―――倉橋クンだった。
けど、唐突で隙だらけだった俺は彼の登場に思わず後退りした。

「驚きすぎだろ」

「ごめん。倉橋クン…、早い」

「それ、何回くらい聞いたかな。俺はいつも結構朝早いし」

「そ、そっか。そうだよな」

はぁ、相当混乱してる。
脈が早い。
心臓が飛び出るかと思った。
誰もいないと思っていたとこに実は誰か居た、という展開は相変わらず心臓に悪い。
俺が気まずく顔をしかめるとふう、と横からため息が聞こえた。


「――なんか、お前気まずそうだな?こないだはホントに悪かった。お前平気か」

倉橋クン。そんな可哀想な目で俺を見ないでくれないか。
今の俺はどっか欠如してる。だから今の俺は俺だけど俺ではない。

「大丈夫。心配ご無用!男たるもの、いかなる時でも冷静に物事を考えることが大事なんだ」

「‥…え?」

「ほら、手を合わせて目を瞑ればそこは夢の国。あ、川が見えた」

「っ、待て!そ、園田落ち着け、それは三途の川だっ!」

「はは…ははははぁ」

珍しく焦った顔をする倉橋クンに肩を揺さぶられる俺。
俺はといえば、白目を向いて揺さぶられるまま気絶していた。
五分ほどで目を醒ましたというのは、また余談話しだ。



 ・
 ・


「‥……」

「翔太ー?」

「カラス‥スイカ…か、か…カメ…‥メダカ、また“か”だ…。えぇと…あっ、カキ…キジ…、ジ…‥ジ……」

“自己嫌悪”

「っ、うあああああああんっ!」

「うわ、なに?どうしたんだよ翔太っ!?」

「うぅー、ほっといてくれ」

「…?」


頭を抱える俺に眉を顰めながらも心配をしてくれたクラスの友人。
けど俺の頭の中は、正直それどころではなかった。

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あきゅろす。
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