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ブラザーに愛をこめて
01


「ん…、あー眠」


寝ぼけ眼でカレンダーを捲る。
そしてそれは、紛れもなく学校の始まりを知らせていた。

9月1日――始業式






「ふはあぁ〜」

今日も子供の頃から置いてある鳩時計が、けたたましく朝ご飯のお知らせをする。
俺は素早く鳩時計を一睨み。

「‥………」

パッポパッポうっせえんだよ!
黙れっ!黙れっ!
あーちくしょー!

心中穏やかではない俺は、そんな機械の鳥にですら当たってしまうくらい重症だ。

「‥…ねむ」

「おはよー翔ちゃん」

「おはよ」


うぐっ、胃がいたいっ…。
こう…ギリギリぃと痛いんだ。
次いでに言うと吐きそう。

え、何故かって?

何故かと言えば――


「あ、怜ちゃんおはよ〜!」

「はぁあ〜…おう」

「――っ!」


兄貴が来たからだよ。
うわあ、マジで泣きそうだ。
次いでに言うと、また吐きそう。

「おはよ、翔太」

「っ!お、おす…」




俺、最近おかしいよな。

兄貴の顔を見ると胃が痛くなる。しかも、まともに顔が見られなくなるのだ。――いや、別に見なくても良いんだけど。

きっかけは、あの日倉橋クンが言ったあの一言からだ。
モヤモヤ、と霧のような気持ち悪いのが俺の中で渦巻いてる。
罪悪感とも違う。

「翔太」

「っ、う、うわぁっ!」

「…は?」

「あっ…、え、えぇっと…」

肩を叩かれただけでこうだ。
怪訝そうな顔をする兄貴に、俺はハッと意識を戻すと、俺は視線をお茶碗の置いてあるテーブルの方に向けて言った。

「おど…脅かすなよっ!」

「は?」

「い、いやっ、あれだよ……びっくりさせないでよぉ!もうっ!っていうことだよ」

「…何言ってんだ、お前」

「っ、うっ。す、すいません独り言です。 ホントに何でもないのでどうぞお構いなく…」

「なんで敬語?」

「‥……」


うわぁ、何やってるんだよ?
俺、アホ丸出しじゃん。

俺は兄貴と二人っきりになるのが居たたまれなくて、珍しく母さんの手伝いをしようと思ったのに、母さんに「邪魔だから」と言われあっさり断られた。

空気読めコラァーっ!





「はははははっ」

「‥……」

ご飯を待つ間、リビングでは兄貴と二人っきりだ。
兄貴はテレビを見ながら何が可笑しいんだか、片足を椅子の上に乗っけてゲラゲラ笑ってる。
一方俺は、初めてフランス料理を食べに行く子供の如く低姿勢を崩さず、背筋を伸ばし手は膝の上に置いてある状態だ。

「うひゃひゃひゃ」

「っ、」

この野郎ーっ、人がこんなに冷や汗掻いてるというのにテメエは呑気にテレビですか?そんなにおもしろいですか?
あぁ良かったですねっ!

頬杖を付いて視線を横目に、心の中で兄貴にそう悪態を吐いた。

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