ブラザーに愛をこめて
20
俺には、特別みんなに自慢できるような取り柄なんてない。
だけど、取り柄なんかなくったってそれは俺にとって欠点にはなんないんだ。
自分にしかない取り柄なんて、後から考えれば良いんだ。
そうすれば、自ずと自分のことが好きになるし分かってくる。
って、思うことにした――。
「翔太は謝んなよ。寧ろ俺の方が謝んなきゃいけないんだ…。悪いのは俺なんだ」
「…‥龍?」
「俺‥さ、ずっとずっと、中学生の頃から優越感に近いものを感じてた。お前の周りにはいつも誰もいなくて、いるのは俺だけだった。 お前は兄貴の怜治さんにさえ許さない心を、いつも俺には許してくれてた。それが俺にとっての優越感だった」
「‥……」
「お前が怜治さんに、友達も恋人も奪われた、と俺を頼った時も、自分だけが頼りなんだと自分で自分に酔っていたんだ。っ、俺…、最低だよな?」
最低だ、と何度も口にする龍。
今まで龍がこんなに辛そうにしてた顔さえも、俺はちっとも見たことがなかった。
「俺だけが本当の翔太を知ってるんだ、親友だ、って…俺だけの特権を見つけた気分だった」
「龍…」
「けど…そんな時、翔太が倉橋と一緒にいるのを何度か見かけるようになって、なんかそんな翔太に、無性に腹が立ってきた。 だから俺は、いつからか、怜治さんの恋路を利用してお前がどれだけ俺の存在を必要としてるのか試してみたかったんだ!」
いつもひょうきんで、赤点なんか取ったって悩むのは一瞬だけ。
反省なんかその場しのぎ。
そしたら、またすぐに同じ事を繰り返すバカな龍。
あぁ、確かにバカだ。
そんな事、言わなきゃ俺は気付きもしない鈍感なのに、バカ正直だからお前は言っちゃうんだ。
「これは前にも言ったけど、その結果、お前を傷つける形になっちゃったんだ…」
『しょーたああっ!裏切ってごめんっ!傷つけてごめんっ!一人にしてごめんっ!』
『本当はずっと、翔太に謝りたかったっ!でも…これが正しいんだって、自分を正当化してた。 だけどお前がみんなの前で啖呵切った時、お前が本当に一人なんだって事に気付いた…っ、ごめんっ!ごめんっ!』
――つまり、あの時の謝罪にはその意味も含まれてたってことか。
本当に、大バカもんだ。
「っ、翔太、俺は覚悟してる。お前に今度こそ絶交されること!」
「…‥」
「何を言われても、俺にはそんな権利なんかないんだ。俺は、お前の純粋な気持ちを踏みにじったんだからさ…」
「…‥」
「だからさ…‥、」
「――つーかさ、お前どんだけ俺のこと好きなんだよ?」
「……へ?」
優越感とか特権とか傷つけちゃったとか、そんなセリフを男の俺に吐くなんて、相当俺の事を好きじゃなきゃ出来ない。
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