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ブラザーに愛をこめて
16

満たされたんだから満たされてないだか、よく分かんない腹。
多分、後者だろうな…。


俺はふと自分の手を見た。
手には、まださっきの汗ばんでいた兄貴の身体の温もりが残っている気がした。
喉を鳴らし、息も荒かった。
露出の多い兄貴の身体は、運動をしているはずもないのに確かに引き締まっていて格好良かった。

確かめるように何度も俺の身体を触りまくる兄貴。

それは、俺を好きだという証拠。

『愛してる…』

母さんが居ない時は過度なスキンシップの多い兄貴。
実は夏休み入ってから既にこの行為が始まっていたのだ。



例えば、こんな事も――。


「翔太〜」

ソファーに座っていた兄貴が手招きをしてきた。
近付いてみると、兄貴は突然自分の足を開き、その隙間をポンポンと叩き始めた。

「おいで」

「〜〜っ、」

つまり、兄貴は自分の膝の間に座れ、とそう示していたのだ。
俺はナチュラルにその行動をした兄貴にドン引きした。

「ぜってえ行かねえ!」

「じゃあ一緒に風呂入るか?」

「っ、何考えてるんだよっ!」

「だったら、俺の間に座ってくれることくらい良いじゃん…」

くらい、って言うけど…それって結構ハードル高いぞ。

「変態っ!」

「へぇ、言うねえ。 まぁ確かにそうかもしれないなあ」

「っ、…」

バカだ。
何で嫌だって言うのをわかっててそういう行動を取るんだろう。
我が兄ながら、ホントに学習しないヤツだと呆れるくらいだ。

「ぷっ、認めんのかよ」

「否定したところでお前が翻さないことくらいお見通しだし」

なんだコイツ。
まるで言い返さない、それどころか、開き直る兄貴に目を丸くさせた俺はそのまま肩を震わせた。


「翔太?」

「くっ…、あははははっ。お見通しって何だよお前!」

「……‥」

「あは、はははははっ!」


自分がこんなことされて不愉快なのに、兄貴のあまりの傍若無人さな口振りに、俺は怒りよりも笑うことの方が勝っていた。そこに特別、理由などなかった。


ただ久し振りだった。
兄貴に向けてこんなに自然に笑えたのは。
そんな俺の行動に目を開いて驚いたのは兄貴だった。

「翔太…」

「何?…うわっ、な、何だよ」

「嬉しい!」

「は?」

俺の肩口に顔を埋めた。
それ、好きだよな。

「笑ってくれたな」

「……え?」

「俺に笑ってくれた。久し振り」

「っ、べ、別に…、あれは、」

「へへへ…」

例えるなら、親に褒められたのが嬉しくて、照れたように甘えた笑みを浮かべている光景だ。
目の前にある俺の髪を弄びながら、肩に回した手を弱めることもなく、ずっと俺を抱きしめ続けた。
それはまるで子供のようだった。

「…‥」


弟としては少し複雑な感情もあったけど、特に邪険にすることもせず、優しい俺は、兄貴の気の済むようにさせてやった。

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