ブラザーに愛をこめて
14
腕の中で必死にもがいても、兄貴は一向に俺を解放してくれない。それどころか、力は徐々に増すばかりで俺の抵抗も無駄なだけ。
息苦しいのと恥ずかしいのとで頭の中がグチャグチャだ。
「あ、兄貴っ…、」
「ずっと、こうしていたいな…。そしたらもっと翔太を独り占めできるし、傍に居られるのに…。はぁ苦しいよ…」
「……、」
くすくすと笑いながら俺の肩口に頬を摺り寄せる兄貴。
俺の心臓が破裂しそう――。
そう思ってる自分がものすごくイヤだっ…。だって、これじゃあ俺がまるで変態じゃないか。
「どうした?翔太…熱いよ…」
「…うっ、」
「顔も熱いな。兄弟でこうしてるのが恥ずかしい?それとも俺に抱き締められて興奮した?」
「っ、そ、それはないっ!」
「へぇー、素直じゃないな」
「バカじゃねえのっ、お、女の子じゃあるまいし興奮なんて、す、するわけないだろっ!」
ウソだ――。少なからず兄貴の肌の温もりに動揺してる。
俺、もう、どうしたら良いか分かんないや。
恋愛経験不足の俺は、ただ兄貴のなすがままになるしかない。――そんな俺を余所に、満足げに口を歪ませた兄貴は、目をゆっくりと瞑り、二人っきりの甘い甘い一時を無駄のないように過ごした。
幸せが逃げないように。
「ねぇ?翔太」
「…な、何」
「俺の体も触って…」
「――っ!!」
神様、仏様、母様!
頼むっ!これ以上絶えられない。母さん、兄貴が暴走する前に早く帰ってきてよお〜っ!
「ほら、俺って結構いい体してるだろう?」
「うっ…」
「ここも」
「あ、やめ‥ろっ…、」
変態兄貴の逆セクハラ。
つーか、お前はマゾヒストかよ。
俺が押し退ける度に欲望に満ちた目つきで、荒い息を落とす。
「もっと、もっと…」と気が狂ったように求めてくる兄貴。
「ふ、ふざけんな、よ…」
「俺は本気だよ。自分の体に少しでも触ってほしい、って求めるのはお前だけだよ、翔太」
「お、おまっ…またそういうことを臆面もなく言うなよっ!」
「お前、彼女いたクセに反応が初々しいなあ〜」
「やかましいっ!」
「可愛い」
「てっめえ〜〜っ!!」
つーか、俺たち二人で抱きあいながら何やってんだろう…。
そして兄貴は病院に行けっ!
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