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ブラザーに愛をこめて
09

「俺さ、途中で寝ちゃっててさー中センに起こされるまでガン寝してたんだよ〜!」

「…へぇー」

「俺ってば、中センに目ぇ付けられちゃったみたい…」

ケタケタ、と大笑いを繰り返しながら今日の出来事を赤裸々に話し続ける龍に苦笑いをする俺。
因みに中センとは、龍が受けた授業の担当の教師、中田先生のことだった。

「……‥」

「なぁ翔太、聞いてる?」

「……えっ、あぁうん」

「…‥なーんか今日の翔太、ノリ悪くない?具合でも悪い?」

「え、そんなわけないだろう。コレが具合悪く見えるか?」

「んー、そう言われてみれば、顔色も悪くないし飯もちゃんと全部食ってるもんな〜?」

「‥……」


どうしたんだろ、俺。

兄貴と俺の事を誰よりも理解してくれてる龍だからこそ、今だったら話せると頭の中では分かっているのに、いざその段階になると出来なくなってしまう。
それは、もし前みたいに無邪気に話したりしてまた何か言われたら――そう思って自然と臆病に口を噤んでしまうからだ。
いや、もうあの時の事は何とも思ってない。思ってないけど…


「ごめん」

「え?何、翔太トイレか?」

「今日は…帰るよ」

「えっ!?何でさ?」

「いや、ちょっと用事思い出したからさ…」

「ちょっ、翔太っ!?」

俺のバカやろうって思うけど、やっぱり頭で思ってることと無意識に身体が動いてることが相反する時って、必ずあると思うんだ。
タフはタフなりにやってるけど…
今はそのタフも、暫し休憩をしなければ冷静な判断ができない。

龍の呼びかけにも耳を傾けることなく、俺は入ったお店を駆け足で出て行った。きっと龍には何がなんだか分かんなかったよな。俺だって分かんない。
そうだよ、わかんないんだ…。

「あっ…、そりゃあ携帯に掛けてくるよな」

龍から着信が来た。けど今は出れる状態じゃないから出ない。
確かに兄貴同様に龍ともまだきごちないさが残るけど、少しずつ回復は出来ている筈だった。けど、前みたいに何でも相談ができるほど俺だってバカじゃない。
じゃあどうすれば良いんだって話しだけど、解ける糸口が見つかんない以上不必要にもがいても仕方がないし。

それに……


「園田か?」

「っ!」

何たって、俺だってか弱い人間なんだからさ。




「――翔太?」

――なんて、自分に対して言い訳ばかりしていたせいで、龍が俺と倉橋クンの楽しそうな掛け合いを見ていたことにちっとも気付いていなかった。

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