ブラザーに愛をこめて
07
「いっただきま〜す」
「いただきます」
「いっ…いただきます……」
何とか夕飯にありつけたけど、俺は肩の力を抜けない…。
横目で兄貴を窺った。
けど普通に飯食ってるだけで俺に何か言うわけでもなかった。
やっぱり俺のあの疑いは気のせいだったんだろうか。
いや、油断は禁物だ!
もしかしたら、俺は明日死ぬのかもしれないんだから。
今日は徹夜をしないと。
寝てるところを奴が一発で仕留めるという方向も充分――
「おい!翔太」
「――ぶはっ!」
「ちょ、翔ちゃん大丈夫!?」
「ゲホゲホっ…大丈…ケホ、」
突然の兄貴の呼び止めに、俺の飲み込んだ飯は有り得ない場所へと流れ込んでしまった。
ヤバイ、マジで苦しい…。
「まったく、慌てて食べるから」
「ケホ…苦しっ、」
「ちょっと待ってて今フキン持ってくるから!」
あぁ情けない…。
決して母さんの言うように、慌てて飯をかけこんだわけではないんだけど、兄貴を警戒してたとは言えず、そこは敢えて口を慎んだ。
そして兄貴はと言えば、母さんがフキンを取りに行ったのを見届けてから俺に「はい」とお茶を差し出してきた。
「………ありがと」
「ったくドジ。お前何やってんだよ、ゆっくり食えよ…」
「…っ、ケホ」
「ほら、ここにも付いてる」
「…っ」
未だ治まらない咳に苦痛に顔を歪める俺。けどそんな事気にしないと云わんばかりに、兄貴は俺の頬に視線を向けると口元に付いた汚れを右手で拭られた。
そして、
「子供みたいだな…」
「っ!!」
その手を舐めた。
「がっ…!な、なな舐め…」
「…何?」
「…舐めた」
「弟の口付けたものを舐めたって良いだろう別に…」
「…………‥」
そう言ってニヤリと笑いながらペロッと舌を見せる兄貴に、俺は何となく見てはいけないものを見たようで、マジでショック。
「取りあえずキスができない代わりに良いものを貰ったよ」
「なっ…、」
「ん?翔太は不満か?それならもっと舐めてやるけど…?」
「いらねえよ!」
「そう、残念だな」
「っ、残念って…、」
「だってさーお前に触るチャンスがなくなっちゃうじゃん?」
「………‥っ、」
なんだろう、兄弟らしく振る舞える自信がないのを感じた。
特に兄貴!お前の言動はとても弟を扱う態度とは言えんよ。それとも何か、コレが兄弟の振る舞い方だと言うんだろうか。
神様仏様、助けてえー!
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