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ブラザーに愛をこめて
04




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「おーい、こら。実明いつまで寝てんだよ。もう5時だぞ?」

「…ん、んんー…うるさいわね…って、怜治ぃ…?あんた‥何しに来たの‥よ」

「残りの荷物取りに来た」


激怒した翔太が先に帰ったあの後、怜治はその足で実明のマンションに来ていたのだ。
怜治によって起こされた下着姿の実明は、フラフラと覚めない頭と目を擦りながら眉を顰めた。

「…ていうかあんた…、よくも自分の荷物を人に任せて脳々と帰ってくれたわね!」

「だから取りに来ただろ」

「もう残りはこのパンツだけよ」

そう言って、ムスッとした実明は怜治に見せつけるように下着をヒラヒラとさせた。

「お前さー、仮にも女だろ?女だったらさ、男の下着を平気で掴まないで少しは恥じろよ」

「うるさい、この下半身男がっ!それに私、高校生の弟いるからそんなの何ともないのぉ」

「うわぁ〜女失格。 つか、弟以前に、平気でそんな姿を男に見せてる時点で失格だけどな。…あーあ。しかもお前部屋くらい片付けろよ」

「いちいち煩いわねぇ。あんたは母親か!それに、荷物取りに来ただけなんでしょ!だったらさっさと帰りなさいよ。だーい好きな翔太くんが待ってるわよ」

「…‥――ああ」

そう言って黙り込んでしまった怜治に、実明は何を言うわけでもなく、目の前の簡易テーブルの上にあるタバコに火を付け、静かに怜治を見た。

「あんたも吸う?」

「いらない」

「…‥どうした?」

「‥…」

怜治が荷物を取りにきたのはただの口実だと、実明には初めからお見通しだった。

「翔太が…、」

「――え?」

「翔太と…さ、そのぉ…色んなこと話しして…仲直りした」

「へぇ〜良かったじゃん!」

「久しぶりだったから…」

「ん?」

「翔太とあんなにたくさん喋ったのって、久しぶりだったから…すげぇ嬉しかった」

「そっか〜!じゃあ、あんたは翔太くんに感謝しないとね?」

「え…?」

目を丸くする怜治に目もくれずその横でふぅー、と煙を噴かすと、実明はそのタバコを灰皿に押し付け、胡座をかいて怜治に向き直った。


「翔太くんって良い子ね」

「知ってる」

「怜治。翔太くんはね、あんたを必ず迎えに行くって自分から言ってくれたのよ」

「…っ!」

「確かに、最初にお願いしたのは私の方からだったけど…でも、すごい決断だったはずよ?」

「…‥」

眉を顰める怜治を、心配そうに実明がそっと覗き込んだ。

「怜治…?」

「アイツは…アイツは…そういうヤツなんだ」

「…え?」

「アイツは昔っから、肝心なことになると自分の胸の内に秘めちゃうんだ。…こんな俺に酷い事を言われても、まぁ…ある程度言い返すことをしても、もっと言わなきゃいけないことを、アイツは絶対に言おうとはしなかった…」

「怜治…」

「彼女に振られたあの時だってそうだった。俺が勝手に嫉妬してあんな意地悪言ったのに、翔太はそれを、どこかで自分のせいだと未だに責めている…」

「……」

「だから、兄貴の俺にですら胸の内を明かせないアイツが…俺はどうしようもなくほっとけない」

「怜治」

「自分勝手だよな。俺が蒔いた種なのにさ…」


――なぁ、翔太?

俺がお前をそんな風にさせちゃったんだよな?

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あきゅろす。
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