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ブラザーに愛をこめて
01

「あぁそこそこ〜」

「翔太ぁ〜まだ続けるの?」

「当たり前だろっ、これは俺のか弱いハートを傷つけた罰だ」

「〜〜っ、」

夏期講習二日目を終え、俺は龍の家に着くなり、龍には今日から、夏休み肩もみの刑を与えた。
本当は、夏休みの宿題の刑にでも処するべきかとも考えたが、俺より成績の悪いヤツに任せたら、結果は目に見えてるので止めた。

「翔太ぁ〜〜!」

「…――」

ふっ、悪いな龍。
俺はこう見えても結構根に持つ方なんだよ。傷口を抉られて黙っていられるほどお人好しじゃないんだよ。――まぁ、肩もみだけで罪を見逃すだけでも有り難いと思ってもらわないと。

「はい、ご苦労さん!」

「はぁぁぁ〜〜!」

「…‥」

――ホントは、倉橋クンが提供してくれた案だったりする。その時の倉橋クンのニヒルな顔は忘れはしない…。



「え、飯食わないの?」

「あぁ、今日は帰るよ。…兄貴が飯作って待ってるんだよ」

「…‥へぇ。ふぅーん。愛しの怜治さんが待っ…ふぎぃっ!」

「あぁ悪い。足が勝手にっ…!」

「〜〜っ、」

懲りずにまた調子に乗った龍の足に天誅を下してやった。激痛に言葉も出せない龍。なぁ、お前は学習能力がないのか?兄貴の話しは俺にとって、今やNGワードに相当するのだ。
痛みに耐えながら律儀に玄関まで見送ってくれた龍。けど、まだ警戒心を解けない俺はそれを冷ややかな視線で送り返した。

「じゃあまた明日」

「しょ、翔太ごめんよぉ!俺、また無神経なことを――」

「っ、…」

龍の雄叫びはドアを閉めてからも続いたが、俺はスルーした。

俺が鈍感ならお前は無神経だ。
あぁ、鈍感より質が悪いぜ。
アイツって、本当にバカだし時々ムカつく所もあるけど、憎めないのはやっぱりアイツの人徳なんだろうなぁ…。
なんか悔しいけど…




 ・
 ・


「おかえり」

「っ…あ、兄貴!おまっ…玄関の前で何やってんだよ?!」

「待ち伏せ」

「…へ、誰を?」

「翔太」

「‥……あ、あー‥俺‥?」

兄貴の甘笑みキャラが未だ板に付かず、戸惑うばかり。

「飯出来てるぞ」

「あ、あぁ‥そう」

「今日は親子丼だ」

「そう…、」

俺がそう返すと途端、俺の肩にそっと手を置いた兄貴。
俺の凍るように強張った身体を、兄貴が気付かないはずもなく和らげようと俺の髪を優しく梳いてきたが、この行為が返って俺の冷静さを奪っていく。

「…あ、に――」

「翔太、好きだよ…」

「…っ、」

「お前はやっぱり…可愛いな? そうやって、何もかも分からなくて戸惑ってるお前は可愛い」

「バ、バカにしてんのかよ!」

「違うよ――」

いきり立った自分に対し、兄貴が触れる俺の肩にさらに力を加えると、今度は自身の身体にゆっくりと抱き寄せた。


「翔太…」

「…‥ちょっ、」

「お前を愛してる…」

「…‥」

「お前のすべてが好きだよ…」

「‥キザなこと言うなよ」


切なそうにクサい台詞を囁く兄貴だったけど、俺はその手を拒絶することができなかった。

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あきゅろす。
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