ブラザーに愛をこめて
03
「ごちそうさん」
「どういたしまして」
「…っ、」
以前の兄貴とは違って、優しい。
ほらっ、今だってあんなに柔らかい笑みをしてるし。
取りあえず、にこにこしてくる兄貴に俺は微笑み返し。けどそれも全部苦笑い。ハ、ハハハァ…
そんなカラ笑いをしていると、兄貴が再び続けた。
「旨かったか?」
「まぁ…それなりには‥」
「そうか」
「ホントに金返さなくていいのかよ。兄貴が金欠になっても俺返せないからな!」
「バイトしてるから平気だ」
大学生は良いねぇ、時間に融通が利くし時給だって少し高いし。
最近思ったが、血液型って本当にアテにならないと思う。
だって、世では几帳面だとされているA型なのに、俺は全然そんなことはない。寧ろ洋服のたたみ方最悪だし。対するマイペースで不器用とされているB型。ところが兄貴に関してもこれには当てはまらなかった。
金銭感覚きちんとしてるし、きっと金貯まってんだろうなぁ。
「何難しい顔してんだよ」
「……」
トリップしてた。
「…ふっ、お前ボーっと歩いてるとその内スッ転ぶぞ?」
「えっ…うわ、やべえ!」
「ぶっ、アハハハハ!」
「…‥笑うなっ!」
ふと思った。そういえば、久しく見ていなかった兄貴の笑顔。
もともと大人っぽいフェロモンを醸し出す兄貴があーやって無邪気に笑うと、兄貴も普通の大学生だなって感じで人懐っこい印象を持たせる。――いや、俺がそうさせちゃったのかな?俺が冷たくしたから…。
「…‥」
それにしても、考えれば考えるほど不可解なんだよな…。
兄貴は一体俺のどこが良かったんだろうか――?
顔?…じゃないよな。顔は自分のを見てれば充分だし。
じゃあ性格?…ひねくれ者だし。
いつか兄貴は俺に、ほっとけない、と口走っていたことがあったけど、でもそれって、兄が弟を心配する身内的なアレではないかと思うんだが…。
でも、キスされた。
普通の兄弟はキスなんてしない。
だったらやっぱり兄貴は俺に好意を持ってるって、ことだよな?
――キス
「お前、なに人の顔ジロジロ見てんだよ。俺に欲情でもしたか?」
「っ、」
…――キス!?
そういえば俺って、前に兄貴にキスされちゃったんだよな。
あぁー!思い出しちゃったあっ!なんたる屈辱なんだ。
しかも兄弟間でキスなんて単語を使うのもこっぱずかし過ぎっ。
「兄貴っ!」
「何だよ翔太、今度は発情か?」
「下品にも程があるぞっ!」
「なんだよ急に…?」
「っバーーーカッ!」
「…はぁ!?」
間違いだらけな自分の思考に俺は居たたまれなさを感じ、兄貴に背を向けて帰った。
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