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ブラザーに愛をこめて
19

「どうしてくれよぉ」


放課後、靴箱から自分の取り出し、外履きに履きかえると正門では律儀にも兄貴とお昼を食べるメンバー全員が俺の帰りを待ち伏せしていた。
俺は気づかれないように、速攻で回れ右をして裏門へと逃げた。さすがに裏門までは頭に廻ってなかったようで、追ってくる気配がないことに、俺はまたしても安堵の溜息を1つしたのだった。

「…‥」

まさかとは思うけど、みんなは兄貴の気持ちを知っていたんだろうか?
まぁ俺としては、今朝の事が冗談であってほしいと、今日1日で何度思ったことだろうか。



実は長谷川さんからのメールの後に、もう1つメールが来ていた。送り主は勿論兄貴から。
けど、あんな事を言われた後で送られてくる内容なんて…と思ったら、とても内容を見る気にはならなくて、メールのマークは未だ開封されぬままだった。


「よっ、翔太」

「うわぁぁぁぁっ!…って、なんだよぁー渡辺達じゃーん」

クラスメート達だ。
クラスでは割と仲の良い方だけど兄貴の存在があるため、腹を割れるほどの仲ではない。
びっくりしたぁ!てっきり兄貴に見つかったのかと思ったぁ〜

「翔太、ビビりすぎだよ」

「うっせぇよ!!」

「つーかさー、お前の兄貴が正門で待ってたけど良いの?」

「え゙…あ、あー‥し、心配ない!あ、兄貴が待ってるのは俺じゃねぇから!」

「そっか!ならいいけど、お前の兄貴があそこにいるせいで女子がすごい群がってたぞ?」

「げぇ、マジかよ…」

そんな余計な情報まで律儀言う渡辺達は「じゃあな」と可笑しそうに笑いながら帰っていった。
くそぉ、絶対に今の顔は面白がっていたに違いない!


──そして俺も後を追うように学校をあとにした。

だけど…




「おかえり」

「…っ!」

寄り道してから家に帰ると、兄貴が家の前で待ち構えていた。
兄貴の顔は一瞬凍えそうなほど怖い表情をしていた。

「…お前、なんで放課後正門にこなかったんだ」

「きょ、今日は裏門から帰りたい気分だったから‥」

「それは朝言っただろう!?しかも昼にメール送った」

「…わ、わ、忘れてたんだ!」

「……」

何が“忘れてた”だよ‥。
しかもメールなんてまだ見てないし。はぁー、嘘ばっかり。

でも、兄貴に俺が「好きだ」と言われて「うわぁ!嬉しい」なーんて納得して、普通に接することなんてできるかっつーの!

「お前…っ!」

「っ、」

「はぁー…まぁいいや、ちょっと俺の部屋に来い」

「い、いやだ」

条件反射だった。
つい、口が滑ったんだよ。
俺を愛してると囁いた兄貴が今は怖くて堪らない。
だって言い方悪いと思うけど男が男を‥しかも、血の繋がった兄貴が弟に恋愛感情を抱くなんて異常じゃないか。

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