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ブラザーに愛をこめて
18

昼休み。授業開始まで残り5分前というときに、俺の携帯にメールが入っていた。

送り主は長谷川さんだ。

どうして俺のアドレスを知ってるのかはこの際置いといて、長谷川さんは『どうして今日のお昼来なかったの?』と送ってきたのだ。
そして『何気に龍クンも素っ気ないし、様子がおかしい』との内容も一緒に入っていた。

俺は握っていた携帯にぎゅうっと力が篭もった。

「龍…」

あいつ、兄貴の気持ちに気づいてたんだよな?やっぱり…。
って、いやいや!…ま、まだ、兄貴が俺を好きかなんて決まったわけじゃねぇし!

「はぁぁーーあ‥」

重苦くて、深ーい溜め息をしながら机に伏せた。
はぁー…でも、まさか龍と兄貴がおかしいのは、全部俺が絡んでるから!なーんて言えないし…




「――携帯とにらめっこって、面白いのか?」

「!!」

突っ伏していた頭上から声が聞こえてきて、てっきり龍かと思えば、最近このパターンが多いなぁと顔を上げ、声の主を見て目を細めた。

「…‥倉橋クン」

「うわ、嫌そうな顔」

「何しに来たの?」

「つーか、自分の女のクラスに来ちゃ悪ぃのかよ?」

兄貴と良い勝負のこの色男が、仏頂面で俺の頭を鷲掴みにした。
地味に痛い。

「それって、彼女ってこと?…うわぁ、髪を乱すなよ!」

「まぁそんなとこ?」

「だから何でそこは疑問系なわけ?…っていうか、倉橋クンこないだ大学でも彼女待ちしてたじゃんかよ!」

「…‥あー、あれは別の女」

「は?」

「持て余してる女?」

「…‥」

ここにもヘンな奴がいた。
俺が軽蔑の目で見ているのもお構いなしに、倉橋クンは彼女の所に行ってしまった。つーか、うちのクラスメートなんだけど…
そんな彼女も、瞳をキラキラさせて恋する乙女モード全開。
まるで兄貴を見てるようだ。


「――あ!なぁ?園田?あんたの兄貴の園田怜治って、どんな奴なんだよ?」

「…え゙」

彼女とイチャイチャしてたはずなのに、いつの間にかまたこっちに戻ってきた倉橋クンが、唐突に兄貴の事を聞いてきた。
しかもよりによって、このタイミングで兄貴のことなんか聞かないで欲しいよ…

俺はそんな重々しい空気を全開に怒気混じりに言った。


「超ムカつく奴っ!」

「へぇー…?」

「な、なんでだよ!」

「別に…」

そう言って、5限を知らせるチャイムとともに真意も分からないまま姿を消していく謎の男・倉橋悠介──否、一生こんな男の真意など知りたくもないと言うのも、また俺の本音だった。

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