ブラザーに愛をこめて
16
「っ、」
(なんだよ…‥これ‥?)
「ちょ、あ、あに‥っ、んん」
「…‥」
(俺、兄貴にキスされてる?)
そう自覚すると、俺は兄貴を引き剥がそうと身悶えてみた。
けど効果はなく、手の自由を奪われた今、足で抵抗するしかなかったのに今度はその太ももから下も、兄貴の足に挟まれた事によってその手段もたたれてしまった。
「兄貴っ、…んん、どういうつもりだよ!…あっ、ん」
「……」
けど、いくら俺が顔を背けても、兄貴がそれを追っかけてキスをしてくる。それどころか、息が出来ないほどの深いキスに目眩がしそうになった。
手に、力が入らない。
「…ん、ぷは!はぁはぁ…‥っ、な、な、なにすんだよっ!」
「…‥」
「ふざけんなよ!何キモいことしてんだよ!放せよ!」
勢いよく兄貴を押しのけ、すぐに兄貴と距離をとり、唇も制服の袖でゴシゴシと拭った。
その姿に兄貴は一瞬苦虫を噛み潰したような顔をした。
しかし、しばらくすると兄貴は、どことなく戸惑いの色を出しながらも、再び俺と向き合う形になって言った。
「──好きだ」
「…は?」
「お前が好きだ」
「……な、な‥に、言ってんだよ?……んんっ、」
せっかく取った距離も、素早く兄貴に腕を引っ張られたことで呆気なく拘束されてしまった。兄貴は荒い呼吸混じりに「好きだ」だと繰り返すばかり…
そしてさっきよりも激しいキスに俺の頭は混乱が止まらず、おかしくなりそうだった。
「分かれよ‥俺の気持ち」
「…んん」
「子供の頃から好きだった、ずっと翔太を見てたんだ」
「っ、あに、き、い…やだ」
「…翔太、俺の好きな奴がどんな奴かもう一度言って見ろよ」
この状況で俺に何を言わせるのかと思いつつも答えれば、この唇を解放してくれるだと思ったら、無我夢中で口が動いていた。
「んんっ…ア、アホで…」
(アホで抜けてて…)
「はぁはぁ…生意気で‥」
(いつも生意気ばかりで…)
「な、泣き虫で…はぁはぁ‥」
(よく泣いてばかりで…)
「……ど、鈍感‥で‥」
「なぁ翔太?お前はどうして俺に怒っていたんだっけ?」
「…そ、それは兄貴が俺の事を鈍感扱いする…‥‥っ!!」
(そう。鈍感で、ムカつく弟)
「ふっ翔太、口が開きっぱなしだぞ?…‥あーそっか!お前、俺に自分がどうして“鈍感”なのか聞いたことを後悔してるんだ?」
「…‥っ!」
「…図星か。ま、もっとも今更後悔しても遅いけどな?」
「…お、遅い?」
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