ブラザーに愛をこめて
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それにしても、この登下校になんか意味でもあるのかなぁ?
だけど、それを聞こうとすると大抵兄貴に無視されるか酷いとめちゃくちゃ怒鳴られる。
神様はイケメンにしか良いことを与えてくれないんだ。…だとしたら神様は不公平だ。
「もう少し早く歩けないのか」
「けっ、悪かったなっ!兄貴よりも足が長くてね!」
「ふん」
「…ったく!」
(…ん、あれ?)
ふと、兄貴の手に光輝くものが指に嵌ってるのが目に入った。俺はギョッとした。
それは以前、俺の誕生日に兄貴が俺にプレゼントした指輪とまるっきり同じだったからだ。
それによく見ると、今まであんだけあらゆる指に色んな指輪を付けていたはずなのに、今兄貴が嵌めているのは俺と同じ指輪だけだった。
「…‥」
改めて見ると、兄貴はタンクトップから覗かせるネックレスに、ガッシリした腕から光るブレスレットに、そして俺と同じ指輪を嵌め、茶と金混じりの髪を静かに掻きあげた。
そんな兄貴の仕草は、悔しいけどやっぱりカッコ良いなぁと思いながら、俺は何気なく兄貴に指輪の事を聞いてみた。
「…‥兄貴。その手に付いてるのって俺と同じやつ?」
「…‥は?」
「指輪だよ、指輪」
「っ!」
歩いてた兄貴の足が止まった。
「…は?兄貴?」
「……」
「おーい兄貴ぃー?」
「……」
固まって反応がない。
「…?‥おい、あに…‥ぶは、って何すんだよっ!」
「っ、うるせーよっ!」
無反応の兄貴を呼ぼうとしただけなのに顔をぐいっと押し出され、また怒気を露わにした。
心なしか兄貴の顔が赤い気がしたけど、それは多分怒ったせいだと思う。
「だ、だいたいなぁ、翔太は昔から無神経なんだよ!」
「はぁ!?いちいちケンカ売るような言い方すんなよ!」
「っ、あのなっ!…‥はぁー、もうダメだ。俺限界だわ」
「は?」
「…もう、絶えられねぇ!」
「…‥?」
絶えられない──。
兄貴は確かにそう静かに呟いた。その後も、額に手を置きながら「言わなきゃ」とか「我慢できない」とか呟いていた。
俺は兄貴が何を言ってるんだか分からず、黙っていた。
すると兄貴は俺に視線を向けた。
「お前さ、そろそろ気付けよ」
「…は?」
「俺の好きな奴だよ!」
「お、おう…?」
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