ブラザーに愛をこめて
09
「なぁ翔太!」
「もぉーしつこいぞ龍!俺が良いって言ってんだから…!」
「だって怜治さんが…」
「あれがアイツの性分なの!」
「……」
アイツには、優しさとか‥情とかはないんだ!!だから平気で弟の俺にあーいうふざけた事が言えるんだ。…けっ、兄貴なんて大っ嫌いだ!
「あ!龍、今日さ──」
「泊めてやんないよ!!」
「…え?」
あれ?龍どうしたんだ?…な、なんか‥いつもより機嫌悪い?
さっきまで何ともなかったのに、へんな奴だなぁ。
(あー‥そっか!)
さては龍の奴、昨日英語のノートを見せてやらなかったから怒ってんだなぁー?
そう思案すると、俺は龍の肩をポンポン叩きながら言った。
「もう龍ってば、俺が悪かったよぉー。英語のノート見せてやるから機嫌直せよ?…な?」
「…」
「はい!ノート安くしとくぞ」
「っ、そんなんじゃない!」
「っ!?」
龍は怒声を出すと、俺が手渡そうとした英語のノートを勢いよく払いのけたのだ。
ノートはまるでスローモーションのように静かに落ちた。
「なにすんだよっ龍!」
「翔太は鈍すぎだ!だけどそれを責めるのは気の毒だと思って責めるのを止めた。けど今の翔太を見てたら、やっぱり怜治さんの方が気の毒だ!」
「‥はぁぁ!?お前までまた人の事を鈍い扱いするのか!?」
「あーそうだよっ!もういい加減、お前が鈍すぎてイライラしてんだよ!」
「…龍っ!お前、何言ってんだよ!わけわかんねぇよ」
「……もういいっ!お前がそこまで怜治さんを悪く言うとは思わなかったよ」
「龍っ!!ちょっと待てよ!話しはまだ終わっ──」
「翔太とは、暫く口も聞きたくねぇよ!反省でもしろ」
「おい待てよ!龍!」
(──な…なっ…!)
「なんだよあの態度!!兄貴も龍も主語がないから全っ然わかんないじゃないか!」
しかも、暫く俺とは口も聞きたくないってか?!
上等じゃねぇか。やれるもんならやってみろよ!
俺だって、兄貴同様に理不尽な文句を言うだけ言って逃げるようなみみっちぃ男なんか願い下げだっ!
「……」
なんで俺だけいつもこんな思いをするんだろう。
俺…誰にも迷惑かけたつもりなんてないのに…
それとも俺は、知らず知らずのうちに、龍に迷惑でかけてたのかもしれない。龍だけは‥そういうのも含めて分かってくれると正直甘えていた。
「がぁぁーーもうっ!わっけわかんねぇよっ!誰か俺に説明してくれよぉ!」
頭をワシャワシャさせてみた。
どうして、俺が怒られなきゃいけないのか? 反省をしなきゃいけないのか?
だけど‥いくら、ない知恵を絞っても、見えるはずの事実はそこにはなかった。
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